日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.1 車椅子へ移行するための評価ポイントについて

質問

人工呼吸器を離脱し、フェイスマスクで酸素投与を行っている患者さんがいます。
体位変換・ヘッドアップまでは行えるのですが、車椅子乗車へいつ移行すれば良いのか迷っています。車椅子へ踏み切るための評価ポイントを教えてください。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

人工呼吸器から離脱したばかりの患者さんを無理に離床させて再挿管・・・そんな事態は避けたいですよね。
まず、最初に評価していただきたいことは座位(特にヘッドアップ時)姿勢の耐容能です。その患者さんはヘッドアップで息切れが強くなったり、SpO2が下がったりしませんか?酸素化能が極端に悪い症例では、肺の柔軟性の指標であるコンプライアンスがヘッドアップにより悪くなることが報告されており1)注意を要します。ヘッドアップを行い、日本離床研究会の基準2)でSpO2 90%以上を保ち、Stillerらの基準3)でSpO2 安静時比4%以上の低下がなければ続行します。
ヘッドアップが30分以上可能となったら、端座位を試してみて下さい。
「ヘッドアップ座位で車椅子座位は同じではないのか?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、下肢がベッドより下にさがるだけでかなりの血流が取られるため、全介助であっても一度は試す必要があるかと思います。血圧の変動など循環動態をチェックし、5分以上端座位が可能となったら車椅子座位を試しても良いでしょう。
但し、移乗時の息こらえによる急激なSpO2の低下に注意する必要があります。公式テキスト166頁にあるよう、動作にあわせた呼吸法を徹底して指導してください。

  • 1) BITTNER, E: Changes in oxygenation and compliance as related to body position in acute lung injury , Am Surg 62:1038-1041, 1996
  • 2)曷川元 編著:離床の開始基準と中止基準、実践早期離床完全マニュアル:p145,2007
  • 3)Stiller K, et al: Safety issues that should be considered when mobilizing critically ill patients, Crit Care Clin 23:35-53, 2007