日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Vol.4 「共通言語」

多職種連携・チームアプローチの必要性が問わる中、前回の離床ファシリテーター通信では「カンファレンス」について話を取り上げました。今回は多職種で円滑な連携を取る上で必要な会話のテクニックについて述べたいと思います。

 皆さんは、同職種スタッフ間の会話はスムーズに行なえるが主治医や多職種スタッフとの会話では意見の食い違い、伝達不足を感じることはありませんか。

私も同様の経験をして苦い思いをしたことが数多くあります。それによって患者さんに充分なケア・リハビリテーションが提供できていないのではないかと感じるのです。

私は理学療法士です。理学療法士の専門性は、身体機能に特化した評価を行うことであり、ADL場面を想定したリハビリテーション(以下リハビリ)を日々実施しています。リハビリはリハビリテーション室で実施することが多いですが、リハビリ早期介入例では、リハビリテーション室ではなく病棟に赴きベッドサイドでの介入をします。

 病棟では、日常の患者さんの様子・内服管理状況と、私だけでは知りえなかった情報を多職種スタッフがもっています。その有益な情報を引き出すため、私が意識していることは「共通言語」でのコミュニケーションです。

 私達医療スタッフが患者さんにおける共通の理解・認識をもち、個々ではなく”チーム”として患者さんと関わり合いをもつことを、それぞれのスタッフが意識することで各々が専門性をいかんなく発揮することができると考えます。

 具体例を紹介します。当院の循環器病棟看護師は”心臓リハビリテーション(以下心リハ)=心筋梗塞を発症した患者さんに対しリハビリスタッフが個別で行うもの”と認識されていました。私は、心リハは多職種で協力して包括的に支援していくものと考えていました。そこで、看護師や新人スタッフに勉強会や日頃の会話を通して心リハに対する認識を共有し、循環器病棟で専用シートを作成した結果、情報収集がスムーズになりカンファレンスやリハビリが円滑に進むようになりました。

※循環器病棟専用シート(写真はイメージです。)

また「共通言語」の活用によりチーム連携の促進だけでなく、チーム内の離床への関心も高まり、自身の考え方にも変化が生まれました。以下に示すものはその一部ですが、皆さんのチーム連携のきっかけになればと思います。

まとめ

「共通言語」によるコミュニケーションで知識共有がスムーズとなり、多職種間の積極的なコミュニケーションの強化につながります。現在、共通言語でのコミュニケーションは広がってきてはいますが、病院全体を見渡すとまだまだ浸透しているとは言えません。また同職種であるリハビリスタッフでさえも同じように感じることがあるのです。
 以上の点を踏まえ、当院では、「共通言語」による他職種連携を強化したE-MAT(離床チーム)の結成を目標としています。各々のスタッフの意識改革のためリハビリテーション科内での勉強会を各自担当のもとで月1回開催しています。また当院の認定看護師を含めたメンバーで、院内の離床に対する問題点の抽出・今後の課題を検討できる環境づくりをしています。

 今後控える医療介護の同時改定や2025年問題など、社会情勢や時代の流れにアンテナを張り、患者さん第一をもとにチーム連携促進していきます。

離床推進ファシリテーター
鳥取赤十字病院リハビリテーション科
離床アドバイザー 松森崇志