日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

The Prince Charles Hospital 劉啓文

日本離床学会認定指導医のすすめ
The Prince Charles Hospital 劉啓文

床から離れると書き「離床(りしょう)」と読みます。この背景には、病院・入院生活では床に伏していることが長く、床から離れている時間が短いということが背景にあります。人の体は歩く・動くために設計されています。横になるためには設計されていないのです。そのため、体を全く動かすことがない入院生活では、患者さんの身体は驚くほどのスピードで弱っていき、入院前の生活に帰れません。これが重症になってくれば、不動+炎症病態のダブルヒットにより身体は更に弱っていきます。事実、ICUに入室した半数以上の方が社会復帰できないことがわかっています。

近年になって早期離床・早期リハビリテーションという言葉が活発に使われるようになってきました。病院に入院した後には、身体の筋肉が萎縮する前にリハビリテーションを開始して、筋萎縮を予防するというアプローチです。2007年ごろよりICU(Intensive Care Unit: 集中治療室)での早期離床・早期リハビリテーションという考えが広まり、現在では一大ブームを巻き起こしています。

早期離床・早期リハビリテーションが、安全で有効であるという論文は実に多く発表されています。ICUに限らず、病棟においてもリハビリテーションの重要性は変わりません。また今までは早期リハビリテーションができないのではないかと言われていた、心不全・心筋梗塞・心臓血管外科術後・脳卒中などの患者さんにおいても、早期離床・早期リハビリテーションは推奨されはじめています。我々医療従事者は、病院で患者ケアに関わる以上はこの早期離床・早期リハビリテーションに関わらないわけにはいかない時代になったのです。これは、やった方が良いという類のものではなく、“やらなければならない”ものという認識をしなければなりません。

しかし、日本において早期離床・早期リハビリテーションを進めるために一つ大きな障壁があります。「安全なのか?」「だれが責任をとるのか?」といった安全第一主義です。安全主義が悪いわけではありませんが、多くの病院は、これに資格と保証を求めます。残念ながら、New England Journal of Medicineに発表された論文よりも、一つの資格証のほうが、安全と安心を与えられます。

そこで今回、日本離床学会は、離床に関するエキスパートとしての証として日本離床学会認定指導医制度を立ち上げました。認定指導医には知識、経験、そして病院で離床導く情熱が求められます。しかし、安心してください。この文章を読んでいる方は、きっと離床を勉強したくてしたくてたどり着いた方であると信じています。
皆さんの心のうちに眠る熱い思いを実現させるために、是非認定指導医を目指していただければと思います。

今日が皆さんと我々の歩む第一歩になることを祈っております。