日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【腓腹筋のモーターポイント】運動器エビデンス

新コーナー「整形外科・運動器最新エビデンス」の最新情報をお届けします!このコーナーでは、運動器リハビリのエキスパートである海津先生が“これは面白い”という、整形外科・運動器にまつわるエビデンスを紹介。数値や統計の専門用語が出てきますが、このシリーズで、かみ砕いて解説してくれるので、少しずつ慣れていくように、是非、読んでみてください。

今回は「腓腹筋のモーターポイント」という内容を紹介します。

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臨床で、電気刺激(neuromuscular electrical stimulation, NMES)を使った治療をした経験は、ありますでしょうか。

骨格筋には電気刺激に対して反応しやすい部位が存在し、それをモーターポイント(運動点)と呼びます。うまくモーターポイントに電気刺激を加えられれば、より少ない刺激強度で筋収縮を効率的に惹起することが可能で、患者さんに「イタっ!」と言わせないNMES治療をすることができます。もちろん個人差もあるので、一人一人のオーダーメイドな調整は必要ですが、最初にあたりをつける場所を正解に近づけたいですよね。

今回は、そのモーターポイントを腓腹筋において特定した研究を紹介します。この研究では、健康な30名(平均年齢37歳)を対象に、ふくらはぎの解剖学的ランドマークを使ってモーターポイントを探しました。サーチペンと3Hzの連続刺激を使用し、腓腹筋の内側および外側頭部のモーターポイントを特定しました。更に、ふくらはぎを48の小さな領域(3×3cm)に分割し、各領域でモーターポイントが見つかる確率を計算しました。そこから、モーターポイントが見つかる確率の高さによる地図(ヒートマップ)を作りました。

その結果、モーターポイントの確率濃度が高かったのは腓腹筋の近位中央と中心やや外側でした。近位中央(第4領域)と中心からやや外側(第29領域)での確率は50%(95%CI:0.31-0.69)と高値でした。次に確率が高かったのは近位と内側(領域9、10、16)で、それぞれ47%(95%CI: 0.28-0.66)の確率でした。

是非、実際のヒートマップを本文か参考資料の私のブログを参照してご覧下さい。これらのエリアは、他の領域よりも有意に高い確率でモーターポイントが見つかりました(p < 0.05)。今回の研究で示されたヒートマップを使えば、NMESの電極配置がこれまでよりスムーズになりそうです。

冒頭でも述べましたが、うまくポイントが見つかれば、患者さんの治療中に「痛い!」と感じさせることなく効率的に筋収縮を引き起こせます。その結果、NMES治療の効果が向上し、患者さんの治療への参加意欲もアップするかもしれません。明日からはまず、腓腹筋の近位中央と中心やや外側からモーターポイントを探してみましょう。

文献情報:
hriwer, E., Juthberg, R., Flodin, J. et al. Motor point heatmap of the calf. J NeuroEngineering Rehabil 20, 28 (2023).
https://doi.org/10.1186/s12984-023-01152-5

参考資料
腓腹筋のモーターポイント
https://note.com/super_human/n/nc5790a8e52d7?sub_rt=share_pw

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