日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【肥満の方が予後が良いは本当!?】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

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グッテン、モーゲン

筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。オーストラリアから最新の文献をお届けます。今回は肥満についてです!敗血症になったとき、事故にあったとき、重症疾患になったとき、太っている方が助かりやすいって本当???

Obesity Paradoxという言葉をご存じでしょうか。やせているよりも少しの肥満である方が予後が良いけれど、肥満すぎると予後が悪くなるという欧米のデータです。しかし、アジアと欧米では体格が違いすぎます。はたしてアジアの肥満に関してはどのような結果なのでしょうか。

その質問に答える論文が報告されました。韓国のYeoさん達は敗血症と肥満の関係についてCrit Care Medicineに2023年に研究結果を発表しました。この研究は、韓国の敗血症グループの9つの病院のデータを用いて解析が行われました。成人敗血症患者6424人を、肥満グループの1335人と肥満でないグループ1335人に分けられました。主要評価項目としては、肥満でないグループの方の院内死亡率が36.7%で、肥満グループの死亡率が25.3%(p<0.001)と肥満グループの方が有意に死亡率が低い結果となりました。さらに肥満グループの方が自宅退院できる患者が多く、退院時のフレイルも少ないという結果がでております。

さらに細かくみてみるとどうでしょうか。痩せ型(BMI < 18.5 kg/m2)、普通(BMI < 18.5–24.9 kg/m2)、少し肥満(BMI < 25–29.9 kg/m2)、とても肥満(BMI ≥ 30 kg/m2)の4つのグループで比べると、やはり痩せ型が一番予後が悪く、少し肥満・とても肥満のグループではほぼ同じくらい予後がよくなる結果でした。欧米と異なり、肥満であることが肥満の程度と関係なく生命予後、機能予後に良いという結論です。

アジアでとても肥満と分類されても、欧米に比べるとそこまでBMIが高くないというのも一つ理由にあるのかもしれません。少なくとも、痩せていることは予後があまりよくなりという結果は世界共通です。いつの日か、重症疾患になったときのために、日頃からの食事、運動、睡眠など健康的な生活が重要ということですね!

無理なダイエットなんてする必要ないですよ。ただ決して、暴飲暴食を推奨している分けではありませんので、飲み過ぎ食べ過ぎにはご注意を。。。

Obesity Paradox and Functional Outcomes in Sepsis: A Multicenter Prospective Study
https://journals.lww.com/ccmjournal/Fulltext/9900/Obesity_Paradox_and_Functional_Outcomes_in_Sepsis_.91.aspx