日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【多施設間研究による貴重な国内エビデンス】挿管患者に対する離床は立位に注意

人工呼吸器患者に対する離床の安全性は、海外の研究で証明されてきましたが、日本人によるデータは、ほとんど報告されていません。

そんな中、ついに日本人によるデータが、Journal of Clinical Medicine誌(IF=4.24)に公表されました。

日本離床学会のKatsukawaら1)は、気管挿管された状態で、端座位・立位・歩行を行った198回の離床を分析した結果、循環動態の変動などの有害事象は6.6%に発生したものの、死亡などの重大なアクシデントは1件もなかったことを報告しました。

これまでの研究は、ベッド上でのエクササイズや、挿管されていない患者の離床を含んだものであり、挿管患者、しかも端座位以上という、最もリスクが高いと思われる離床時に、発生率が上がるのかは、不明でした。

この研究結果から、気管挿管、アクティヴな離床時には、4%ほど、有害事象の発生率が上がることがわかりました。(文献2と比較)

また、有害事象が最も多く発生した離床レベルは立位で、その発生確率は5回に1回の割合と、非常に高いものであることがわかりました。

離床は早いほど良い、と思われがちですが、ICUに入室して早い段階での離床は、バイタルサインの変化が大きいことから、特に立位で、十分注意して行うべきであると考えられます。

この文献の図表では、各離床レベルにおける有害事象の内容を、詳細に見ることができます。

下記リンクから、是非、ご覧下さい。

https://www.mdpi.com/2077-0383/10/12/2607

このエビデンスが、皆さんの臨床に役立つことを願っております。

1) Katsukawa H et al, Risk Factors of Patient-Related Safety Events during Active Mobilization for Intubated Patients in Intensive Care Units—A Multi-Center Retrospective Observational Study: J Clinical Med 10, 2021
2) Nydahl P et al, Safety of patient mobilization and rehabilitation in the Intensive Care Unit. Systematic Review with Meta-Analysis. Ann. Am. Thorac. Soc. 2017, 14, 766-777.

この情報が皆さんの診療に役立つことを願っております。