
新コーナー「整形外科・運動器最新エビデンス」の最新情報をお届けします!このコーナーでは、運動器リハビリのエキスパートである海津先生が“これは面白い”という、整形外科・運動器にまつわるエビデンスを紹介。数値や統計の専門用語が出てきますが、このシリーズで、かみ砕いて解説してくれるので、少しずつ慣れていくように、是非、読んでみてください。
今回は「意外と知らない“歩隔”のチカラ」という内容を紹介します。
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臨床で「足幅をもう少し広げて歩いてみましょう」と声をかける場面は意外と多いですよね。歩行開始で足が細く揃うと、綱渡りのように不安定になり前額面のバランスが崩れやすくなります。
今回紹介する研究は、この“歩隔(step width)”だけに注目し、歩行・走行のバイオメカニクスと安定性がどう変わるかを調査報告です。歩行や走行に関する先行研究を選択し、狭い/通常/広い歩隔の比較が中心に分析しています。その結果、歩隔を狭くすると股関節内転角や膝内旋角、後足部回内が増え、下肢アライメントが崩れる方向へ変化することがわかりました。姿勢制御面でも重心動揺が増え、安定性が低下しました。
反対に歩隔を広げると、股関節・膝の内転モーメントが減少し、中臀筋・小臀筋の活動が増加するなど、負荷の向きと使う筋が明確に変わります。支持基底面が広がることで前後・左右の安定性も高まり、転倒リスク低下につながる可能性が示されました。
臨床・スポーツの視点として、狭すぎる歩隔はバランス不良と衝撃増大を招き、ランニングでは腸脛靭帯や脛骨への負担が増える方向に働くと指摘する一方、歩隔を少し広げる介入は膝蓋大腿痛、腸脛靭帯症候群、脛骨ストレス障害の負担軽減に有用で、歩行時の安定性向上も期待されます。
広げれば良いわけではありませんが、「足幅を少し広げる」というシンプルな指導が、関節や筋の負荷とバランスを同時に調整できる合理的な手段だと再確認できる研究です。
■ 文献情報:
Wang, Yuan, et al. “The Biomechanical Influence of Step Width on Typical Locomotor Activities: A Systematic Review.” Sports Medicine-Open 10.1 (2024): 83.
https://doi.org/10.1186/s40798-024-00750-4



