
新コーナー「整形外科・運動器最新エビデンス」の最新情報をお届けします!このコーナーでは、運動器リハビリのエキスパートである海津先生が“これは面白い”という、整形外科・運動器にまつわるエビデンスを紹介。数値や統計の専門用語が出てきますが、このシリーズで、かみ砕いて解説してくれるので、少しずつ慣れていくように、是非、読んでみてください。
今回は「3種類の体幹運動と脊柱起立筋の筋活動」という内容を紹介します。
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体幹トレーニングにおいて、うつ伏せや四つ這いの練習を実施することが多いと思いますが、それぞれの運動によって、具体的にどのような違いがあるかを把握することは、容易ではありません。そんな時に頼りになるのが、筋電図で筋活動を比較した最新エビデンスです。
今回は、脊柱起立筋を“片側だけピンポイント強化”する方法を探るべく、四つ這いと腹臥位で6つのメニューを調査した研究を紹介します。対象は健康な女子大学生14名に対して、体幹トレーニング中の筋電図を記録し、最大随意等尺性収縮(Maximum Voluntary Isometric Contraction, MVIC)を調査しています。この%MVICは「最大収縮に対して何%働いたか」を示すため、臨床の強度設定にも応用しやすい指標です。
3種類の体幹トレーニング(左右含めると6種類)は次の通りです。
・腹臥位:右腕+左脚挙上
・腹臥位:左腕+右脚挙上
・四つ這い:右腕+左脚挙上
・四つ這い:左腕+右脚挙上
・四つ這い:右腕のみ挙上
・四つ這い:左腕のみ挙上
左右の数値を比べ、差があるかどうかを調査しました。結果は、最も効果の高いエクササイズは、四つ這いで上下肢を挙上で、第6胸椎レベルの筋活動が約7倍促進され、総じて対側の胸椎周囲筋の活動が非常に高まったということです。臨床で応用する際には、弱い側に合わせて「四つ這い+対側上下肢リフト」を処方し、痛みや不安定性があれば片腕挙上から段階的に進めます。腰椎には多裂筋や腹横筋のエクササイズを併用し、目的の筋を最大限に活性化できる運動を選択することが重要です。
■ 文献情報:
・Farahpour, N., Alemzadeh, M., Mohammadi, M., Rezaie, M., & Allard, P. Left–Right Differential Erector Spinae Muscles Activation in Prone and Quadruped Positions. Journal of Applied Biomechanics. 2023;39:54-61.
https://doi.org/10.1123/jab.2022-0047



