日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【ICU-AWはバイオマーカーで診断する時代に?】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。

今回は「ICU-AWはバイオマーカーで診断する時代に?」という内容を紹介します。ICU-AWとは、ICUでの新たな筋力低下、ICUで生じた筋力低下のことです。

ICU-AWはどのように診断していますか?MMTの合計である、MRCスコアで評価してます!っていう方、あなたのMMT4とあなたの隣の席の方のMMT4は本当に同じでしょうか。MMTって結構主観的ですよね。もちろんMRCスコアでICU-AWを診断することはとても正しいのですが、やはり、もっと客観的に評価したいですよね。

そこで、ICU-AWをバイオマーカーで評価できないか、中国のJiameiさんによるレビューが出ていたので紹介します。紹介されていたバイオマーカーはGDF-15、MCP-1、NfH、タイチン、GLUT-4、Myoglobin、NfL、NETs marker cfDNA、MiR-181aです。そうです、残念ながらすぐに臨床で使用できそうなバイオマーカーはまだなさそうです。とほほ..簡単に説明していきますね。

  1. GDF-15:炎症や組織損傷で上昇するストレス応答性サイトカインです。
  2. MCP-1:単球を炎症部位に呼び寄せるケモカインです。
  3. NfH:神経損傷時に血中に出る神経軸索の構成タンパクです。
  4. タイチン:筋肉の弾性に関与する巨大タンパクで、筋損傷の指標です。
  5. GLUT-4:インスリンで活性化される糖輸送体です。
  6. ミオグロビン:筋肉内の酸素運搬タンパクで、損傷で血中に出ます。
  7. NfL:神経細胞損傷で上昇する軽鎖型の神経フィラメントです。
  8. cfDNA(NETsマーカー):好中球の活性により血中に出るDNA断片です。
  9. MiR-181a:免疫や筋再生に関わるマイクロRNAです。

このうちタイチンについてはDr中西もいろいろ論文を書いていますが、筋肉の収縮にかかわる蛋白質であり、ICU-AWの予測因子になりますが、まだ臨床で簡単に測定できる状態にまではなっていません。その他のバイオマーカーもICU-AW診断に有用なようです。これらのバイオマーカーは筋肉、神経、炎症、免疫に関わるものですね。ICU-AWに炎症や免疫が関与していることも示唆されます。

長くなりましたが、結論をいいますと、ICU-AWのすぐに臨床で測定できるバイオマーカーはありません。MRCスコアで測定しているあなたが正しいんです!引き続き、正確なMRCスコアを評価していきましょう!!ICU-AWをバイオマーカーで診断する時代はもう少し先のようですね..

Biomarkers for intensive care unit-acquired weakness: a systematic review for prediction, diagnosis and prognosis
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12222590/