
新コーナー「整形外科・運動器最新エビデンス」の最新情報をお届けします!このコーナーでは、運動器リハビリのエキスパートである海津先生が“これは面白い”という、整形外科・運動器にまつわるエビデンスを紹介。数値や統計の専門用語が出てきますが、このシリーズで、かみ砕いて解説してくれるので、少しずつ慣れていくように、是非、読んでみてください。
今回は「片脚スイングで、失敗なく母趾外転筋をしっかり活性化」という内容を紹介します。
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扁平足の改善に有用なアプローチの一つに、ショートフットエクササイズがあります。臨床でショートフットエクササイズを指導しても、患者さんが「これで合ってます?」と首をかしげる場面、ありますよね。
ショートフットエクササイズとは、母趾外転筋などの足底の内在筋を意識的に使い、足のアーチを引き上げるトレーニングです。母趾外転筋は足底の内側に潜み、①内側縦アーチの支持、②足の安定化、③障害の予防と治療、④静的な足のアライメントと動的な足の運動学の改善など、要である役割を担います。
そこで今回は、母趾外転筋を確実に目覚めさせる失敗しにくい新星エクササイズを紹介します。研究には健康なボランティア16名を対象に、ワイヤレス表面筋電図と8台の光学カメラで筋電図と足部運動を同時計測しました。運動は、座位・立位でのショートフットエクササイズのほか、片脚立ちし、反対脚を前後に振る立位片脚スイングなど9種類の運動について調査しました。
その結果、立位片脚スイングが最も筋活動の高い運動だということがわかりました。短時間の説明で、誰でもこなせる片脚スイングは、ショートフットで挫折した患者さんの強い味方です。片脚で全体重を支えながらバランスを取ることで、母趾外転筋に強い活動が生じると考えられます。自宅でも壁や手すりを使えば安全に行え、監視がなくても十分な負荷が得られる点が臨床的に大きな利点です。さらに全身運動であるため、下肢全体の協調性や立位バランスの訓練にも一石二鳥となります。
次の外来では「ショートフットが難しければ、とりあえず片脚スイングをどうぞ」と一言添えてみてください。扁平足方でも、土踏まずがぐっと持ち上がる感覚を体験できるはずです。
■ 文献情報:
Katakura, M., Rezende, M. A. G., Calder, J. D. F., & Kedgley, A. E. “A comparison of abductor hallucis muscle activation and medial longitudinal arch angle during nine different foot exercises.” Gait & Posture 113 (2024): 167-172.
https://doi.org/10.1016/j.gaitpost.2024.06.008



