日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【膝OAへの即効アプローチ】運動器最新エビデンス

新コーナー「整形外科・運動器最新エビデンス」の最新情報をお届けします!このコーナーでは、運動器リハビリのエキスパートである海津先生が“これは面白い”という、整形外科・運動器にまつわるエビデンスを紹介。数値や統計の専門用語が出てきますが、このシリーズで、かみ砕いて解説してくれるので、少しずつ慣れていくように、是非、読んでみてください。

今回は「膝OAへの即効アプローチ」という内容を紹介します。

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変形性膝関節症(膝OA)の患者さんを診ていて、いま、この場で痛みを軽減させる、即時効果を出したいと思ったことがあると思います。もちろん、根本的には筋力や関節可動域などの身体機能を変える必要があると思います。しかし、歩き方を変えるだけで、膝関節への負荷を軽くできるかもしれない、という興味深い研究を今回は紹介します。

この研究では、膝OAの患者さん47名を対象に、歩行時の3次元動作解析を行いました。まずは普通に歩いたとき、次に体を患側へ傾ける歩き方(同側体幹傾斜戦略)、そして膝を内側に寄せる歩き方(内側スラスト戦略)という3つのパターンを分析しました。 特に、膝の内側にかかるストレスの指標である、膝関節内転モーメント,(knee adduction moment; KAM)に着目し、どの歩き方が最もKAMを減らせるかを比較しました。

解析の結果、68.1%の患者さんにとっては「同側体幹傾斜戦略」が、最もKAMを減らす戦略となりました。一方、膝を内側に寄せる「内側スラスト戦略」が向いていたのは31.9%の患者さんでした。つまり、ざっくり言うと、3人に2人は同側体幹傾斜戦略が、膝に加わる負荷を軽減したということです。この研究ではさらに詳しいデータも取られていて、例えば歩行中に脛骨の傾きが大きく変化した人ほど、膝への負担軽減が大きかったことも分かりました。

これらの結果は、「その患者さんの膝関節の負荷を軽減するには、どちらか一方の戦略が絶対的に正解というわけでなく、個別に合う歩き方を見極める必要がある」ことを示しています。

まとめると、まずは同側体幹傾斜戦略を最初に試してみるのが王道ですが、同側体幹傾斜戦略では効果が出にくい患者さんには、内側スラスト(膝を内側に寄せる動き)も検討するのが良いでしょう。これらの歩行修正技術は、臨床において即時効果を出すために用いたり、評価の視点に使ったりできそうです。

皆さんなら、臨床でどう使っていきますか?

■ 文献情報: Gerbrands, T. A., et al. “Determining the optimal gait modification strategy for patients with knee osteoarthritis: Trunk lean or medial thrust?.” Gait & Posture 102 (2023): 1–9.
https://doi.org/10.1016/j.gaitpost.2023.02.017