
人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。
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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。
今回は「回復期リハを乗り越えたら社会復帰?」という内容を紹介します。最近は、集中治療後の身体、認知、精神の障害である、PICS(ピックス)という言葉を頻繁に聞くようになりました。急性期に救命できても、全ての患者さんが社会復帰できているわけではありません。それでは、急性期に救命できて、リハビリテーション病院も退院した人達はどのくらい社会復帰できているのでしょうか。
ドイツのEggerさん達は、ICUにて5日以上人工呼吸管理をされて、神経系のリハビリテーション施設に入院した患者さんの長期予後を調べました。ICU退室時と、リハビリテーション病院施設退院時に、PICSの症状がどのようになっているかを調べました。
PICSの症状を一つでも認めた患者さんはICU退室時が96%、リハビリテーション施設退室時が85%でした。ICU退室時には87%の患者さんがICU-AWであったのに対して、リハビリテーション施設退院時は66%、認知機能は65%から55%に、精神機能障害は48%から29%に低下しているものの、びっくりするくらい多くの患者さんに、PICSの症状が残っていることが分かりました。
急性期を乗り越えた後に、回復期でのリハビリテーションはとっても重要ですが、そのリハビリテーションを乗り越えたら完全に元どおりに戻っているわけではなく、もっともっと長期的にフォローアップが必要なようです。やはりPICS外来の出番ですね。
しかし、日本では長期人工呼吸管理となったような患者さんの多くが、回復期リハも適応外になっているのが現状なので、まずはそこから変えていく必要があるかもしれませんね。
この報告でも、確実に回復期リハを乗り越えた患者さんのPICSの症状は減ってはいるので、PICSの状態にある患者さんが、回復期リハに入れればいいですね。社会全体で、PICS予防に取り組んでいく必要があることがよく分かります。
Comprehensive assessment and progression of health status during neurorehabilitation in survivors of critical illness: a prospective cohort study
https://annalsofintensivecare.springeropen.com/articles/10.1186/s13613-024-01396-x
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4月30日(水) 19:00~21:00 ※2週間見逃し受講期間有り
臨床での動き方が確実に身に付く!人工呼吸器患者の早期離床 カテゴリー2 ICU-AW編
講師:中野 秀比古 先生
https://www.rishou.org/seminar/theory/r283-2025#/