
新コーナー「整形外科・運動器最新エビデンス」の最新情報をお届けします!このコーナーでは、運動器リハビリのエキスパートである海津先生が“これは面白い”という、整形外科・運動器にまつわるエビデンスを紹介。数値や統計の専門用語が出てきますが、このシリーズで、かみ砕いて解説してくれるので、少しずつ慣れていくように、是非、読んでみてください。
今回は「歩行で中殿筋を鍛える」という内容を紹介します。
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最近、漸進的筋力トレーニングの重要性が注目されています。漸進的筋力トレーニングは、筋力向上に合わせて負荷量を増大する点が特徴です。通常の筋力トレーニングでは、重りやチューブを活用して比較的簡便に負荷を調整できますが、歩行中などの動作に合わせて負荷を調整することは、難しい課題です。
そこで今回の研究では、「片側に重りを持って歩く」という、中臀筋に対する負荷量調整のアイデアを提案し、その効果を検証しています。対象は26名の健康な成人(平均年齢25.3歳)で、それぞれ体重の15~20%の重りを片手に持って歩行を行い、歩行中の筋活動の変化や股関節モーメントの変化などを統計的に検討しました。
その結果、「筋活動の変化」については、重りを持たない側の中殿筋の活動が58%増加し(P<0.001)、重りを持つ側の筋活動には有意な変化はありませんでした(P≥0.790)。次に「股関節モーメント」については、重りありの条件では、重りなしの状態と比較して、荷重と反対側の肢の立脚期における股関節外転モーメントが43%高く、重りと同側の肢の立脚期では、股関節外転モーメントは19%低下しました。
この方法は、歩行中の中臀筋に対する、筋を伸長しながら負荷をかける、エキセントリックトレーニングとして有効で、特に、特別な機器を使わず、日常生活に取り入れやすい点が利点といえます。
例えば、買い物袋をどちらに持つかによって、特定の下肢の対側に持つことで負荷量を増して鍛えるのか、それとも同側に持って保護的に負荷量を減少するのかを選択することができます。トレーニングの負荷量調整という観点に加えて、生活指導や患者教育にも有効な方法だと感じます。
■ 文献情報:
・Graber, Kerri A., et al. “Hip and Trunk Muscle Activity and Mechanics During Walking With and Without Unilateral Weight.” Journal of Applied Biomechanics, vol. 37, no. 4, 2021, pp. 351–358.
https://doi.org/10.1123/jab.2020-0273
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