新コーナー「整形外科・運動器最新エビデンス」の最新情報をお届けします!このコーナーでは、運動器リハビリのエキスパートである海津先生が“これは面白い”という、整形外科・運動器にまつわるエビデンスを紹介。数値や統計の専門用語が出てきますが、このシリーズで、かみ砕いて解説してくれるので、少しずつ慣れていくように、是非、読んでみてください。
今回は「静的ストレッチ vs PNFストレッチ」という内容を紹介します。
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臨床現場において、筋の柔軟性や痛みを改善するために、複数のアプローチがあり、選択に悩むことがありませんか?最適な介入方法を選択するためには、それぞれのアプローチによって、得られる効果の違いを理解している必要性がありますよね。
今回は、静的ストレッチと固有感覚神経筋促通(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation, PNF)ストレッチの、二つのストレッチ方法の違いを探る研究を紹介します。それぞれの介入方法によって何が違うのか、一緒に理解してみましょう。
この研究は、健常者を対象に、静的ストレッチとPNFストレッチの二つの方法が、ハムストリングスの柔軟性と筋硬度にどのような影響を与えるのかを調査しました。静的ストレッチでは、膝を伸ばした状態でハムストリングスを30秒間、検者が受動的にストレッチしました。これに対して、PNF法では、ホールド・リラックス法を用いて、まず5秒間の受動的伸張、その後5秒間の等尺性収縮を行い、最後に20秒間の追加伸張を実施しました。これらのストレッチはそれぞれ3セット行われ、各セット間には30秒の休息が設けられました。
結果として、どちらのストレッチ方法もROMが平均で15%から20%程度増加しました。しかし、筋硬度に関してはPNFストレッチのみが、大腿二頭筋の筋硬度の指標である剪断弾性率を有意に低下させる効果を示しました。特に、PNFによるストレッチ後に大腿二頭筋の筋硬度が約10%減少したのです。このことは、PNFが単に筋肉を伸ばすだけでなく、その筋硬度を改善する可能性があることを示唆しています。静的ストレッチもPNFストレッチも、ハムストリングスの柔軟性を効果的に向上させる一方で、PNFはさらに筋硬度を低下させる可能性があるため、筋肉の柔軟性だけでなく、その硬さを改善することが求められる場面ではPNFの方が有効かもしれません。
更に気になるところとしては、筋硬度の違いがその後の痛みや機能にどのような影響があるか、という部分です。それによって、場面別のストレッチング方法の適応が明らかになるかもしれません。ストレッチングはリハビリテーションにおける基本手技の1つなので、しっかりと学んでいきたいですね。
文献情報
Železnik, Petra, et al. “Acute effects of static and proprioceptive neuromuscular facilitation stretching on hamstrings muscle stiffness and range of motion: a randomized cross-over study.” European Journal of Applied Physiology 124.3 (2024): 1005-1014.
https://doi.org/10.1007/s00421-023-05325-x
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