人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。
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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。
今回は「離床のリスク評価ツールができた!?」という内容を紹介します。
皆さん、日々の離床ご苦労さまです。最近の離床は、Team trialの結果が出てから、離床のリスク評価が重要になってきたと思います。Team trialというのは、早期離床が有害事象を増やすと報告したとんでもない報告でした(笑)。というのは冗談で、Team trialのおかげで早すぎる離床が注意喚起されて、どのような患者さんで離床をすべきでないかを考え直す機会になったと思います。今回は、そんな離床の有害事象やリスクを評価するツールが報告されたので紹介します。
- 離床の有害事象報告ツール
- 昇圧薬使用中の離床リスク評価ツール
イギリスのWoodbridgeさん達は、国際的なエキスパート、患者、患者家族も含むデルファイ会議を実施してこのようなツールを作成したようです。ここまでしていたらかなり信用できますね。
どのようなツールなのでしょうか。論文のツールの図が分かりやすいと思いますが、概要を説明したいと思います。離床の有害事象報告ツールは実際におこった有害事象に関してチェックしていく様式のようです。項目としては以下のようなものになります。
生理学的な変化:徐脈、頻脈、低血圧、高血圧、徐呼吸、頻呼吸など
気道:挿管チューブなどの誤抜去
心肺:心筋梗塞、肺塞栓、不整脈など
神経:痙攣、脳梗塞、神経学的所見の悪化など
ラインなど:器具、ライン、ドレーンの抜去
転倒や外傷:転倒が外傷をきたした、創部が離解したなど
その他:死亡、心肺停止
これらの有害事象がどれくらい有害であったかのチェック
昇圧薬使用中の離床リスク評価ツール
原則:離床を中止する血管作動薬の具体的な数値は設定しないが、バイタルサインを観察しながら段階的に離床をしていく必要がある。脳障害の患者は対象となっていない。
離床をしない場合:循環動態が不安定、肺塞栓、大動脈解離、呼吸不全、活動性の出血、ノルアドレナリン・アドレナリン 0.5γ以上など
離床をリーダーと相談する場合:2種類以上の昇圧剤を使用している場合、昇圧剤の容量が増加してきている場合、最近の不整脈、アシドーシス、ECMO、IABPなど
離床有害事象のリスクが高く注意する場合:ノルアドレナリン・アドレナリン 0.2γ以上、ドブタミン10γ以上、心拍出量低下、スタッフの経験不足など
途中で力尽きて、おおざっぱなまとめになりましたが、それぞれの項目はもっと細かく記載されており、20-30個くらい項目があります。離床をするにも複雑化の時代ですね…とほほ
急性期に安全に離床するには、これくらいのことが必要になってきたのでしょうか。英語が得意な方は直接論文をみてもらった方が早いと思います。英語が苦手な方は、一緒に日本語訳を作りましょう(笑)。今回はこんなツールもあるという紹介でした。
それでは日々の離床を頑張りましょう!!
Assessing the safety of physical rehabilitation in critically ill patients: a Delphi study
https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13054-024-04919-x