日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【筋肉がないと歳をとる?】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。

今回は「筋肉がないと歳をとる?」という内容を紹介します。

皆さん、筋トレをしていますでしょうか。厚生労働省も2023年に「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」で、筋力トレーニングの実施は生活機能の維持・向上だけではなく、疾患発症予防や死亡リスクの軽減につながるため、週に2日以上の筋力トレーニングを推奨しています。

この筋肉ですが、脳の加齢とも関係しているようです。中国のLisさん達は、33,992人の患者さんの筋肉量、身体機能とMRIでの脳の状態について調べました。筋肉量は体組成計で除脂肪量を測定しているようです。脳のそれぞれの部位と、筋肉量の関係は以下のようでした。

淡蒼球の加齢は四肢の除脂肪量が少ないほど進行
扁桃体の加齢は全身の除脂肪量が少ないほど進行
淡蒼球の加齢は下肢の除脂肪量が少ないほど進行
小脳白質の加齢は下肢の除脂肪量が少ないほど進行
海馬の加齢は握力が低値なほど進行
側坐核の加齢は下肢の除脂肪量が少ないほど進行
被殻の加齢は四肢除脂肪量が少ないほど進行
側坐核の加齢は歩行速度が速いほど進行
脳室の加齢は歩行速度が速いほど進行

基本的に筋肉が少ないほど脳の加齢も進行しているようで、これはMuscle Brain cross-talkという概念が関係しているかもしれません。筋肉からは様々なサイトカインが分泌されて、筋肉と脳が会話をしているという考えもあります。もしかしたら筋肉が減ると脳との会話も減少して脳も萎縮していくのかもしれないですね。

この筋肉と脳の関連に関しては今後の研究が必要な分野だと思います。一方で歩行速度が、速いほど脳の加齢は進行するという結果も報告されていて、ゆっくり歩くほうが脳にはいいのでしょうか?これはあくまでそういう結果が得られたということなので、本当に因果関係があるかは今後の研究が必要ですね。

明日から日本離床学会の皆さんがゆ~っくり歩いていないことを願います。

Unveiling the muscle-brain axis: A bidirectional mendelian randomization study investigating the causal relationship between sarcopenia-related traits and brain aging
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38513381/