日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【ブルブルで社会復帰!?】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。

今回は「ブルブルで社会復帰!?」を紹介します。振動療法ってご存知でしょうか?振動を用いてブルブルとさせるリハビリです。そのままですね(笑)

この振動療法って何十年も前からあります。医学的には、多くの疾患でリハビリなどに用いられてきました。しかし、ここ何十年間この振動療法が使用されてこなかった領域があります。それがICUです。ICUに入室する重症患者にこの振動療法が有効かは報告がありませんでした。

そこをなんと徳島大学の土肥さんが、ICUの患者さんでこの振動療法のリハビリテーションの効果を、無作為化比較試験で報告してくれました。2020年10月から2023年7月で3年かけた無作為化比較試験です。

使用した振動療法の機械はこちらです。
動眠®︎TREMO (トレモ) A5(株式会社:伍信)

振動療法群は96名,非振動療法群は81名が対象となりました。在室日数は4(3-6)日間,振動療法期間は2(1-3)日間でした。ICUに入室する患者さんでも振動療法は、血圧や心拍数などのバイタルサインに影響なく安全に使用可能でした。

身体機能の指標であるFunctional status score for the ICU(FSS-ICU)の総得点には、有意差を認めませんでしたが(24[18-27]vs21[17-26],p=0.09)、起き上がり項目に関しては有意差を認めました(6[3-6]vs4[2-6],p<0.01)。副次評価項目では疲労感の軽減にも効果がありました。

サブ解析では、BMI高値の肥満の方、APACHEⅡスコアが低値の重症過ぎない患者さん、IMSが高い離床がある程度できている患者さんで有意な効果を認めました。つまり、ICUで振動療法は身体機能に一定の効果を及し、特にBMIの高い患者さんで有効、重症すぎる患者では効果が限られるかもしれないという結果でした。

近年、ICUでは早期離床が一般的になってきています。重症疾患罹患後、大きな手術のあとにずっと寝ているのではなく、積極的に起きて座ってリハビリテーションをすることが社会復帰への鍵です。

しかし、実際にはベッド上に座ったりしてもマンパワー不足もあり、十分な離床・リハビリができないことが多々あります。そんな時にこの振動療法などを併用すれば、離床・リハビリが促進するかもしれません。

1日15分の振動療法は、患者さんに過剰な負担を与えず、身体機能改善に一定の役割を果たすことが、今回科学的に証明されました。報告された雑誌も、Crit Care Medと世界的に権威のある雑誌です。今後、振動療法が浸透するのでしょうか。心も体もブルブルしますね。

Effects of Vibration Therapy on the Physical Function of Critically Ill Adults Trial: A Randomized Controlled Trial
https://journals.lww.com/ccmjournal/abstract/9900/effects_of_vibration_therapy_on_the_physical.282.aspx