日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【PICSはこの方法で評価しよう】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。

今回は「PICSはこの方法で評価しよう」を紹介します。PICSとはPost intensive care syndromeの略で、重症疾患罹患後に病気が治っても、長期的に身体機能障害、認知機能障害、精神機能障害が残って、社会復帰できない状態のことをいいます。つまり、集中治療室を退室したからって医療は終わりじゃないわけです。

しかし、このPICSはどのように評価するのがよいのでしょうか。この方法については、今までエキスパートオピニオンに基づくことが多く、客観的な評価ができていませんでした。そこで日本のDr中西が、PICS評価方法の推奨を世界に発信しました。(超手前味噌です 笑)

まずはここ約10年の文献を全て調査しました。6972件の文献をチェックして、PICS評価を行っている754件の文献があることが分かりました。そして次にこの754件の文献全てを調査して、PICSに対してどの診断方法が最も用いられているか抽出しました。しかし、診断方法は頻繁に用いられているものが必ずしも最も良いとは限りません。

そこでその使用頻度にあわせて、日本のPICS委員会にも協力して頂き、どの診断方法が最も有用か、投票を行い、最も推奨度の高いものを明らかにしました。専門的な用語になりますが、以下のものになります。

身体機能:6分間歩行、MRCスコア、握力
認知機能:MoCA、MMSE、SMQ
精神機能:HADS、IES-R、PHQ-9
ADL:Barthel Index、IADL、FIM
QOL:SF-36、SF-12、EQ-5D-5L、EQ-5D-3L、EQ-5D-VAS
睡眠:PSQI
疼痛:Brief Pain Inventory
PICS-F:SF-36、HADS、IES-R.

横文字ばっかで難しいですね 汗

例えば、ICU退室後の患者さんに対して身体機能評価をどのように行うのがよいか、という課題に対して「握力や、MRCスコアという筋力評価、6分間歩行」が推奨になります。ADLに関しては、おなじみのBarthel IndexやFIMに加えて、金銭管理や掃除など、より高度なADLを評価したIADLも推奨になります。

このように今回、PICSの推奨が明らかになったことで、PICSの状態にある患者さんをしっかりと評価、モニタリングして社会復帰を目指していくことができます。もちろん社会復帰には様々なケア、離床、栄養など多職種での介入が必要になってくることはいうまでもありません。この患者さんはここまでかなとか思う日もあるかもしれませんが、私たちがそこを限界と定義すればそこが限界になります。諦めない社会復帰を目指していきましょう。

Instruments to assess post-intensive care syndrome assessment: a scoping review and modified Delphi method study
https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13054-023-04681-6