人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。
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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。
今回は「DVTこそ早期離床?」を紹介します。皆さんDVTというのをご存じでしょうか。DVTというのはDeep Vein Thrombosisの略語で深部静脈血栓症といいます。つまり深い静脈に血栓ができた状態で、基本的には、下肢の大腿静脈にできた血栓のことを指します。静脈に血栓があるので、離床をしたら血栓が飛んでとんでもないことになる?っていうのが一般的な認識だと思うのですが、はたして本当にそうなのでしょうか。
オランダのRookさん達は、DVT発生時の離床についてシステマティックレビューを行いました。ちなみにDVT後の様々な状態を、血栓後症候群(PTS:Post-thrombotic syndrome)といいます。PICSみたいですね。
2007年から2022年までの、10件の研究が対象となったようです。それぞれの研究のアウトカムが違いすぎて、メタアナリシスまではできなかったようです。DVT急性期の早期離床の効果についてですが、なんと抄録を読むと、DVT発生時の早期離床が、QOLや血栓後症候群の重症度を改善したということです。
中身をみていきます。10件中に3件の研究が急性期のDVTに早期離床を行ったようです。Junger達は、DVTを確認した後に最低5日間は離床をした群と、完全にベッド上安静にするグループを比較したようです。もちろん抗凝固や弾性ストッキングは両群使用しているようですね。
p = 0.09と有意差こそなかったものの、離床をした群でDVTの進行、肺塞栓、院内感染、死亡につながるような有害事象は少なかったようです。Blättler達は、DVTのグループで弾性ストッキングをつけて歩行までしたようですが、そうすることでQOL改善、血栓の進行も緩徐になったようです。Partsch達は長期的な経過をみていますが、離床をした群の方が血栓後症候群は少なかったようです。
なるほど、、DVTは離床の禁忌になることが多いと思いますが、確かに寝かしていたらさらに血栓も進行して予後も悪化するということでしょうか。驚きの結果です。
あくまでもこれは血栓の大きさやタイプ、患者さんの状態、病院での取りきめなど様々なことに影響されると思いますので、DVTがある状態で離床をするかは慎重にお願いします。
なかなか慎重な判断が必要なテーマですね。
途中までしか読んでいない人が、バンバン肺塞栓を作らないか心配です…
Effect of exercise after a deep venous thrombosis: a systematic review
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jdv.19523