
人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。
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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。
今回はIntensive Care Medicineという雑誌に、離床・リハビリの未来についてまとめられていたので、紹介します。そういえば昔、Kiroroという歌手が「未来へ」という曲で、「ほら前を見てごらん、これがあなたの未来」と歌ってましたが、前をみただけでは離床・リハビリの未来がみえません。。。ここはエキスパートの意見を読んでみましょう。
離床・リハビリの過去
昔は重症な患者さんを深く眠らせて、なんなら筋弛緩薬も使用して、休ませることで疾患の治癒を促したなんて時代でした。しかし、そこで問題となったのが、筋萎縮、ICU-AW、PICSなどの病気はよくなったけど社会復帰ができないという現状でした。そこで離床・リハビリの現状を大きく動かしたのが、2009年にLancetに掲載されたSchweickertさんの無作為化比較試験でした。ここで早期離床・リハビリが有効という結果が報じられてリハビリの現在が大きく変化します。しかし、2022年にHodgsonさんらはNew Engl J Medという雑誌に、近年の大規模な無作為化比較試験では早すぎるリハビリテーションは効果がないばかりか、有害事象も起こしたという結果を報告しました。一方で、2023年にPatelさんらはLancet Respir Medで早期リハビリは認知機能などを改善するという早期離床・リハビリを推奨する結果を報告しました。
さて、ここからが未来です。この先の離床・リハビリはどうしたらよいのでしょうか。これから先の離床・リハビリのエビデンス作成のためには5つのことが重要になります。
- 用語の問題
リハビリと離床は異なることを意識する。離床は積極的に体を起こすことをメインとし、一方でリハビリは、広い意味でのあらゆる介入を含みます。目標を設定したリハビリ、積極的な離床など用語の理解が必要。 - 報告の違い
離床・リハビリの頻度・強度・持続時間・種類などの違いによる離床・リハビリの効果や詳細な内容、軽度または深刻な有害事象の定義が必要。 - Usual careとは何か?
無作為化比較試験などではよくUsual careと比較されて報告されますが、Usual careとは何でしょうか。研究によりUsual careが異なるので、Usual careをしっかり定義、記載することが必要。 - 対象患者の選定
どのような患者さんに離床・リハビリ介入が有効か。離床・リハビリ介入の効果が大きい患者を認識すること。炎症が高い、筋障害などのバイオマーカー、人工知能などを駆使して離床・リハビリ介入が有効な患者を明らかにする必要があります。 - リハビリとの因果関係
例えばICUでの離床・リハビリ介入とICU退室時の評価であれば離床・リハビリの効果を評価できますが、PICSのように退室12ヵ月後などであれば、離床・リハビリ以外の要因も大きくなります。つまり、長期フォローは重要であるものの、離床・リハビリ介入との因果関係が分かるアウトカム設定が必要。
つまり、今後の離床・リハビリの未来のためには、この5項目をしっかりと認識して研究をして、どのような患者さんに、どれくらいの、どのような離床・リハビリが有効かなど効果のより詳細な部分を調べていくというのが、今後の離床・リハビリの未来に必要になります。
なんとなく前をみて研究をしていくのではなく、このようなことを意識していく必要があるということですね。一言でいうと質の高い研究を頑張りなさい!ってことなんですけど。臨床と研究の両立は大変なんです… とほほほ
Physical rehabilitation in the intensive care unit: past, present, and future
https://link.springer.com/article/10.1007/s00134-023-07099-4