日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【早期離床が有害事象を増やす!?】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

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早期離床に関して皆さんはどのようにお考えでしょうか。去年の年末にNEJMに早期離床が有害事象を増やす!?という論文がでて話題になったのは記憶に新しいところです。
Early Active Mobilization during Mechanical Ventilation in the ICU
N Engl J Med. 2022 Nov 10;387(19):1747-1758.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36286256/

さてさて、今回はついに、早期離床が長期予後改善に有効であるという、超ポジティブな結果が発表されました。アメリカ、シカゴのPatelらは理学療法士、作業療法士による早期離床、または従来通りの治療かの無作為化比較試験を行いました。対象はICUで人工呼吸管理を受けるADLの自立している患者さんです。

なんとその期間は2011年から2019と9年もかけています。そして1施設ですが1222人の患者さんがスクリーニングされ、200人が含まれました。そして9年かけた研究の結果は退院1年後の認知機能低下が早期離床群では24%、通常治療群では43%と有意差(p = 0.004)を認めました。さらにはICU-AWも早期離床群で0%、通常治療群で14%と有意差を認めました(p = 0.0001)。有害事象に関しては、早期離床群で血行動態の変化3人、動脈ラインの抜去1人、肛門チューブ抜去1人、呼吸不全悪化2人と6%に有害事象を認めました。通常治療群では有害事象を認めず、こちらも有意差がありました(p = 0.029)。この有害事象に関する結果に関してはNEJMと同じような結果がでています。

この結果はかなり理解可能だと思います。早期離床はやはり一定の有害事象のリスクはあるものの、長期的な身体機能と認知機能を改善するという、画期的なエビデンスが発表されました。医学の世界ではどのような介入でもリスクがゼロということはないと思います。早期離床もしかりです。ベネフィットがリスクを上回ると考えた時は、やはり患者さんにとってベネフィットのある介入を提供すべきだと考えます。

リスクを評価したうえで、今日も明日も明後日も離床して患者さんの社会復帰を目指していきましょう!

Effect of early mobilisation on long-term cognitive impairment in critical illness in the USA: a randomised controlled trial
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2213260022004891

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