日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【離床可能なノルアドレナリンの量はどれくらいか】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

*********************************

離床をする時にノルアドレナリンがどれくらいの量であれば離床を行っていますか?0.05γまたは0.1γや0.2γでしょうか??

えっ、そもそもノルアドレナリンやγ(ガンマ)って何?って人もいるかもしれません。大丈夫です、解説します!

ノルアドレナリンというのはカテコラミンといい、血管を上げる薬です。しかし、非常に強力な薬であるために使用量をμグラムで換算して、さらに体重と時間(分)で割った単位であるµg/kg/minで繊細な管理が必要になります。このµg/kg/minを略してγという単位で表現します。このノルアドレナリンは繊細であるがために、高容量を要するような重症な病態では離床をしない方が良いという意見があります。しかし、この高容量というのがどれくらいの量を指すのか明確な基準はありません。

今回、ドイツのLindholzさんらはドイツの16のICUでの離床のデータベースを後方視的に解析しました。データベースの12,462人の患者さんのうち、6.8%(842人)の患者さんがノルアドレナリン投与下で離床をされていました。まずはノルアドレナリンの使用自体が、早期離床、離床の頻度、ベッド外への積極的な離床の障壁となっていることが明らかになりました。しかし、ノルアドレナリン使用下での離床が死亡率に影響しない。さらには低用量のノルアドレナリン使用に比較して、高容量のノルアドレナリンを使用していても有害事象の発生は変わらないという結果でした。これらのデータベースの解析からLindholzさんらは以下のように結論付けています。

「ノルアドレナリンの使用が0.20γまでであれば端坐位を含むベッド外への離床が安全であること、また0.33γまでであればベッド上での運動も安全である」
もちろん、この後方視的な研究ですので、絶対的なエビデンスではありませんが、一つ重要なエビデンスが報告されたと思います。

今までの経験ではとか、うちはこうだからではなくて、しっかりと根拠のある離床を目指していきたいと思います!!

Maximilian Lindholz, et al .Mobilisation of critically ill patients receiving norepinephrine: a retrospective cohort study. Schaller Critical Care volume 26, Article number: 362 (2022)
https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13054-022-04245-0