日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【上肢のアプローチを侮ってはいけない!】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

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ICUでの上肢のリハビリはどうしてますでしょうか?上肢は別にって思っているそこのあなた!ICU入室後の患者さんの上肢の機能はどのような経過をたどるのかみてみましょう。

私もICUに入室する重症患者さんの上肢と下肢の筋肉をエコーで評価したことがあります。その結果、下肢のみではなく上肢も筋肉が萎縮していくことを報告しました。なんと上肢の筋肉も1週間で約10%近く萎縮します(PMID: 29110031)。さて、それでは長期的にはどうなるのでしょうか。ブラジルのDaniela Andradede Carvalho MsCさんはICUを退室した患者さんの6ヶ月後の上肢の機能を調べました。名前がめっちゃ長い…

46人の48時間以上、人工呼吸管理となった患者さんが対象です。46人の健常な方が対称群となりました。ICU 退室時と6ヶ月後の上肢の機能を健常群と比較したようです。主要評価項目はJebsen-Taylor Hand Function Test (JTT) とNine Hole Peg Test (NHPT)のようです。どちらの検査も耳慣れないですが、作業療法で使用するようなブロックを用いたような上肢の機能をみる検査ですね。数値が高いほど時間がかかったとしてよくないようです。

この研究では副次評価項目でBarthel index、Medical Research Council scale、握力などもみています。研究の結果はどうだったでしょうか。Barthel Index、MRCスコアはほとんど差がなかったのですが、ほぼ全ての検査でICU退室6ヶ月後の上肢の機能が低下していたようです。

JTT 62 (54-81) vs. 54 (49-61)
NHPT 24 (21-27) vs. 21 (20-23)
Barthel Index 100 (95-100) vs. 100 (100-100)
MRCスコア 60 (56-60) vs. 60 (60-60)
握力 26 (22-39) vs. 32 (24-41)
EQ-5D 0.762 (0.562-1) vs. 0.894 (0.737-1)

つまり、急性期またはその後の上肢の機能維持が重要になるんじゃないかという結論でした。上肢の積極的なリハビリや、作業療法士さんとも協力して上肢のリハビリも頑張りますかー

日々挑戦です!

Upper limb function of individuals hospitalized in intensive care: A 6-month cohort study
Heart Lung 2022 Oct 29;57:283-289
PMID: 36332353
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36332353/