日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【重症患者の改善のキーはミトコンドリアにある??】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

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皆様、ミトコンドリアはご存じでしょうか。

ミトコンドリアは細胞の中で呼吸をして酸素からエネルギーを生み出し、人間の活動にとってもとっても大切な役割を担っています。

アメリカのMart達はこのミトコンドリアの機能障害こそが、重症疾患罹患後に長期的に残存する身体機能障害の原因だ!と仮説をたてて研究を行いました。

ふむふむ、そう言われるとなんとなくそんな気もしてきましたが、実際にはどうだったのでしょうか。

呼吸不全や循環不全でICUに入室して、生存した患者14人を対象に研究が行われました。

患者さんへの運動負荷はCPET(cardiopulmonary exercise testing)や6分間歩行を行いました。

アウトカムの指標としたのは酸素消費量であるVO2の消費スピードと改善までの時間です。

つまり、ミトコンドリア機能がしっかりしていればVO2はしっかりと消費され、しっかりと改善すると考えたわけです。

結果は14人の患者のうち11人(79%)で、VO2の消費のピークが予測値の80%未満と低下していました。

またVO2消費のスピードも緩やかで、改善もゆっくりであったようです。

つまり、ICU生存患者さんで筋肉中の酸素消費が低下していると、ミトコンドリアの機能障害が続いていると結論づけたわけです。

実際にミトコンドリアは見てないじゃんって、突っ込まれそうですが、多くの臨床研究はなかなか直接の因果関係までみれないことも多いので、そこは容赦してあげてください…

ミトコンドリアの機能障害を予防するために我々に何ができるか、そうです、早期リハ、早期離床です!

今日できることを少しずつやっていきましょう!!

文献リンク

Matthew F. Mart et al. Physiologic responses to exercise in survivors of critical illness: an exploratory pilot study. Intensive Care Med Exp. 2022 Aug 26;10(1):35.

https://icm-experimental.springeropen.com/articles/10.1186/s40635-022-00461-8