日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【Dr. 中西の離床面白エビデンス】筋萎縮対策と思いきや驚きの効果!

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

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神経筋電気刺激療法(EMS)ってどの部位に使えばいいのでしょうか。私自身は腕に使用して筋萎縮の予防を行っております。他にどのような部位に使用可能なのでしょうか。実は、お尻に使用した無作為化比較試験の研究結果が報告されました。

いやいや医学用語では「殿部」ですよね。失礼しました…

ブラジルのBaronらはICUに入室した149人の患者さんを無作為に殿部にEMSを使用した群と使用しなかった群に無作為に振り分けました。介入群では殿部へのEMS刺激をICU退室時まで継続したようです。研究はアイデアだといいますが、なかなか斬新な研究です。

結果はどうだったでしょうか。

殿部へのEMS群では殿部の筋肉量自体は変化がなかったようですが、褥瘡の発生が5.3%と対象群の35.6%と比べて劇的に改善したようです。実はこの研究は、殿部に褥瘡ができやすいのでなんとかしたいという研究が目的で、まさに仮説を実証させたすごい研究なんです。なぜ筋肉量自体に効果がなかったのかはナゾですが、確かにEMSは不動化を防ぎ、組織の循環を改善させるため理にかなっている研究です。

そして、なんとなんと殿部へのEMSでICU入室期間も短縮したとのことです!よっぽど嫌だったのでしょうか。というのは冗談で患者さんのアウトカムを改善させる素晴らしい研究の紹介でした。

常識にとらわれていたら医療は進歩しないですね。研究は医療をかえます。日本からも素晴らしい研究を発信していきましょう!

文献リンク
Efficacy and safety of neuromuscular electrical stimulation in the prevention of pressure injuries in critically ill patients: a randomized controlled trial
https://annalsofintensivecare.springeropen.com/articles/10.1186/s13613-022-01029-1