日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【最新ガイドラインの46本ノック】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。

今回は「最新ガイドラインの46本ノック」という内容を紹介します。

なにやら、ヨーロッパ集中治療医学会から離床に関する最新のガイドラインがでたようです。

タイトルをみるとポジショニングと離床のエキスパートオピニオンと書いてあります。

どんな内容なのかわくわくしながら読み進めていきましょう。
みなさん、わくわくしていますよね!!

医師、看護師、理学療法士などの23人のエキスパートが集まって、この推奨を作成したようです。方法としてはポジショニングや離床に関する研究のシステマティックレビュー、
グレード評価にデルファイ会議という会議での点数付けを含んだようです。

そして、46個の推奨に至ったようです。
今回はその46個の推奨を全て記載していきます。

それではさっそく46本ノック、いきますよー

まずはポジショニングに関して

  1. ベッド40度以上のギャッジアップを推奨
  2. 頭蓋内圧を低下させるためにはベッドをギャッジアップ
  3. 腹腔内圧上昇にはベッドをギャッジアップ
  4. 側臥位の肺保護作用は不明
  5. 片肺の障害では良い方の肺を下にして完全側臥位にすることを提唱
  6. 定期的な体位変換
  7. 持続的な側臥位回転を使用しない
  8. P/F<150では腹臥位を実施
  9. 腹臥位は早期に実施する
  10. 腹臥位は少なくとも12時間、できれば16時間実施を推奨
  11. 腹臥位で肺保護換気などを実施
  12. 腹臥位の前に血行動態を安定化させる。カテコラミンを使用していても腹臥位が可能
  13. 腹部疾患や腹部の術後はリスクベネフィットを考慮して腹臥位を検討
  14. 頭蓋内圧が上昇するリスクのある患者では腹臥位中に頭蓋内圧をモニタリング
  15. 開腹状態、脊椎の不安定性、頭蓋内圧上昇、循環動態に影響を与える不整脈、ショックでは  腹臥位のメリット、リスクを個々の患者で議論するべき
  16. P/Fが150以上であるようなら腹臥位終了を検討
  17. 2回腹臥位を試みても体位を維持できなければ腹臥位の終了を検討
  18. 完全腹臥位が意味あるのであって、不完全腹臥位は推奨しない
  19. 腹臥位の時は褥瘡のリスクがある部位に注意
  20. COVID-19で非侵襲的人工呼吸管理を実施されている患者では覚醒した状態での腹臥位を推奨
  21. COVID-19以外では覚醒腹臥位は推奨できない
  22. 覚醒腹臥位の持続時間は推奨できない
  23. V-V ECMOで管理されたARDSの患者で腹臥位を提案

ここからは離床です

  1. ICU入室72時間以内の早期離床を推奨する
  2. マネージャーはどのようにしたら離床阻害因子を克服できるか責任を持つ
  3. もともとADLが自立していた患者では禁忌がなければ早期離床を実施することを推奨する
  4. もともとADLが自立していなかった患者でも禁忌がなければ早期離床を実施することを提案する
  5. 持続維持透析やECMOを実施していても禁忌がなければ早期離床を実施することを推奨する
  6. くも膜下出血や脳室ドレナージ後にチームで相談して問題なければ離床を推奨する
  7. 医学的に安静を必要とする患者を明示することを推奨する
  8. 呼吸不全、循環不全の患者で離床を推奨するが、具体的な数値の基準は明らかではない
  9. SpO2 <86%、心拍数>30%増加、収縮期血圧≧40mmHg増加、拡張期血圧≧20mmHg増加、平均血圧<60mmHg、新規または悪化した治療を要する不整脈、意識レベルの低下、管理困難な疼痛では離床の中止を提案する
  10. プロトコールに基づいた離床を推奨する
  11. 離床プロトコールに安全基準を含むことを提案する
  12. 離床の準備で、患者への情報提供、十分なスタッフの確保、挿管チューブやライン、ドレーンの安全を確保することを提案する
  13. 離床の実施時間に関しては具体的な推奨はできない
  14. 段階的な離床プロトコールを推奨する
  15. 痛み、不安、不穏、せん妄、自発呼吸試験などを含むABCEFバンドルに離床を含むことを推奨する
  16. 離床と高蛋白を組み合わせることを推奨するまではできない
  17. 離床に家族を含むことを推奨するまではできない

機器を用いた離床

  1. 離床にベッド上エルゴメーターを併用することを推奨するまではできない
  2. 十分なリハビリテーションを実施できない場合のみベッド上エルゴメーターを併用することを提案する
  3. ベッド上エルゴメーターを使用する時に頭蓋内圧上昇のリスクのある患者では頭蓋内圧をモニトタリングすることを推奨する
  4. チルトテーブルやトレッドミルなどの機器やロボットを用いた離床を推奨するまではできない

神経筋電気刺激療法

  1. 重症患者で離床に神経筋電気刺激療法(EMS)を使用することを提案する
  2. EMSを使用する時に頭蓋内圧をモニタリングすることを推奨する

ふ~、46本ノックは多いですね。
1つめの45度以上のベッドのギャッジアップからポジショニングに関してはすごく具体的ですね。
離床中止基準もSpO2 <86%とか、やはりエキスパートオピニオン中心なだけあって、
今までの報告にとらわれないより臨床的な値を提示していますね。

ロボットリハやエルゴが推奨までは至らないけど、
神経筋電気刺激療法が推奨に近い感じで記載されているのも、
エビデンスにそった最新のガイドラインという感じがしますね。

医学はどんどん進歩していくので面白いですね!!
それでは、46本ノックお疲れ様でした。

また時間のある時にじっくり論文を読んでみてください。

Guideline on positioning and early mobilisation in the critically ill by an expert panel
https://link.springer.com/article/10.1007/s00134-024-07532-2

[疾患別の離床と栄養のポイントを書籍で学びたい方は]
早期離床・リハビリテーションの理論と実践
https://www.rishou.org/publication/nutrition_reha#/