日本離床学会 第8回 全国研修会・学術大会

STOP THE 離床!?

~ドンドンおこしてくださいという指示に疑問を感じるすべての人へ~

8回全国研修会・学術大会は、前年の入場者を超える500人以上の方が来場し大盛況のうちに幕を下ろしました。本年は新年度診療報酬に「早期離床加算」が新設される発表された年でもあり、全国的に離床が盛り上がるさなか、「本当に必要とされる“意味ある離床”とはなにか」という視点で、安全な離床を行うための対策を学ぶのに充実した講演がラインナップされました。

様々なジャンルのスペシャリストをお呼びした特別講演や、前年のMVP講座「離床時に必須!意外な心電図の落とし穴」、講座のポイントを絞ったダイジェスト講演、人気のハンズオンセミナーリニューアルされました。また2017年の秋から始まった市民公開講座が、全国研修会で初めて開催されました。

これまでの全国研修会・学術大会で培ってきた基盤を踏襲しつつ、新たな風を呼び込むことに挑戦した全国研修会・学術大会となりました。

特別講演 1

早期離床に必要な人工呼吸管理のポイント

昭和大学医学部 麻酔科学講座 小谷 透 先生

ishizaka.jpgNPPVやHFNCの普及により、集中治療医学における救命率は向上しましたが、重症化した人工呼吸器装着患者が多くなり、結果として社会復帰が遅れる現状にあります。原因としてPost-intensive Care Syndrome(PICS)という病態が現在注目されています。 PICS回避のため早期リハビリテーションを試みることは大切ですが、やみくもに早期リハビリテーションを進めるのではなく、呼吸管理のシナリオにあわせた離床を行うことが重要です。

医師から確認すべきこと、モニタリングの仕方、多職種とのチーム連携といった側面から講義をいただきました。

 

特別講演 2

嚥下の常識を打ち破れ!寝たまま嚥下の安全性

健和会病院 福村 直毅 先生

ishizaka.jpg高齢化、障碍者医療における根本的な問題として栄養不良が挙げられ、その大きな原因となっているのが嚥下障害です。食事において起き上がり、嚥下したほうが飲み込みにいいといわれている中、福村先生が提唱するのは完全側臥位法という、従来の嚥下治療アプローチとは異なる視点から解釈を試みています。

嚥下のメカニズムから紐解き、その再構築モデルから誤嚥予防に効果的な姿勢の提唱、その取り組みを成立、継続させるための介入の仕方について紹介していただきました。

教育講座

診療報酬「早期離床加算」算定開始

いまこそ取り組もう!早期離床 

日本離床研究会 曷川 元 先生

2018katsukawa.jpgこの10年で蓄積されたエビデンスにより、早期離床は「やったほうが良いケア」から「やるべき治療」に変わってきました。今回の診療報酬改定「早期離床加算」の保険点数付与は、今後ICUのみならず急性期や一般病棟、回復期の施設でも、早期離床により在院日数を減らそうという動きが加速していくのではないかということです。

一方ですべての患者さんや施設が、安全に早期離床を実施できるかといわれると疑問が残ります。離床に対する経験や知識、そもそも早期から離床するといった土壌のない施設もあると思います。そんな中、離床のオーダーが出され、十分なアセスメントがなされないまま、結果的に患者さんが急変し、「離床=危険」となることも想像できます。離床は安全に取り組む必要があり、場合によっては立ち止まる選択肢を選択できるという状態が大切ではないかと考えます。

この1年間でアップデートされた離床のエビデンスをもとに我々が今取り組むべき具体策を論じていただきました。

 

いつものルーチンケアは本当に正しい?

ありがちな失敗アプローチをバッサリ斬る

東邦大学医療センター大森病院 山田 亨 先生

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“ルーチン”とは日常の仕事などで、型どおりの決まりきったものをさします。仕事の精度を高め、効率的にこなせる一方、思考停止に陥りやすく、個別に対応しにくい反面があります。医療現場でも日々の多様な仕事に対しルーチンに行うことで一定水準以上のケアを実践することができます。しかしそこで立ち止まり、実践するケアに根拠があるものか、患者の状態を把握し適応判断できているものか考えることが重要です。

今回「重症患者の面会は制限されるべきか」「酸素管理SpO2 100%は大丈夫といえるのか」「重症患者に対する作業療法の効果」について、会場の皆さんといっしょに考えていきました。

 

パパママは職場復帰が不安!

相談しづらい不安から対策を学んで安心復帰

さいたま赤十字病院(リハビリママ&パパの会 代表)河合 麻美 先生

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働き方改革が推し進められているなか、医療スタッフの現場ではまだワークライフバランスを実現するのに十分な整備がされているとはいいづらい環境にあります。実際に3回の育児休暇後の職場復帰を経験した講師の河合先生は、職場復帰の不安や難しさを、高速道路の合流車線に例えます。自身の体験談を振り返り、安心した職場復帰を目指すためのポイントを伝え、現役子育て世代やスタッフの職場復帰を控える管理者の方の一助となる充実した内容でした。

 

チームが自発的に動き出す

コーチング型コミュニケーション

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“コーチ”の語源は「馬車」。大切な人をその人が望むところへ送り届けるという意味があります。現在スポーツのみならず医療やビジネス分野で幅広く応用されています。 コ―チングの役割は組織で部下を指導・管理するリーダーを成功させることにあります。リーダーは豊富な知識や経験を有していますが、それが変革や挑戦を阻害する要因となることも少なくありません。

「傾聴・観察・承認・質問」といった手法を用いて、リーダーの意識を変革することが組織の目標達成するための行動支援に繋がるという事を説明いただきました。

 

2018年離床アワードノミネート!

各施設・多職種での離床の工夫を一挙公開

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E-MAT×離床カンファレンス

 ~地域を巻き込んだ取り組み~

世羅中央病院 細谷 雄太

院内での在院日数、安静(寝たきり状態)や絶食期間が長く、廃用性症候群が認められる症例が多くいるため、早期離床に取り組みたいと感じていました。そのために離床カンファレンスを開催し、医師、看護師だけでなくリハビリスタッフ、薬剤師、栄養士、工学技士を含めた多職種の視点で協議する仕組みを整えました。積極的に発言する機会を得たことによって、リハビリ処方までの日数の短縮や処方数の増加に貢献することができました。現在では、チームで地域包括ケア研修の開催や、離床チームが病院内の組織図にも反映されるようになりました。今後はスタッフ間の離床の意識向上や、各チームとの連携を通し、寝たきりによる弊害を少しでも減らしていきたいと考えます。

 

離床前の離床活動

チームワーク向上を目指した勉強会の工夫

牛久愛和総合病院 楠 麻依

実際の臨床で、点滴や輸液ポンプなどルート管理をしながら患者さんの移乗動作をアシストしなければいけない場面が多く存在します。しかし、専門職種ごとに得意不得意があるため現場で不安を抱えることも少なくありません。そのため、看護師はルート管理の技術を、理学療法士は移乗動作介助を、それぞれの職種の専門性を活かせる分野を担当した合同の院内勉強会を開催しました。定期的に勉強会を開催することで、専門技術の習得や多職種の理解につながり、日常業務内での多職種での交流が増え、チームで離床に取り組む基盤ができました。

 

側臥位での手術体位における多職種連携

公立藤岡総合病院 馬場 健太

肺・腎摘手術後、術野以外(頚・肩・肩甲帯周囲)の疼痛の発生を訴える患者さんが少なくありませんでした。それに対して、術中ポジショニングに注目し、普段OPE室で介入を行わない理学療法士がチームに関わり、良肢位保持に努め、多職種へのアドバイスを行いました。その結果、患者さんの術後の疼痛発生率が減少し、早期離床促進につながりました。 

 

学会推奨講演

これから取り組む施設は必見

ICUにおける早期離床の進め方

国立病院機構 東京病院 見波 亮 先生

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2018年、診療報酬改定に特定集中治療室における早期離床・リハビリテーション加算の新設が発表されました。その背景として、医療費増加の抑制を目的に、入院在院日数を減らすために離床が有効と考えられているためです。このセッションではICUでの早期離床を目指すために必要な知識を、“早期離床のエビデンス”、“Spontaneous Awakening Trial”、“離床実践のプロトコル”、“チームアプローチの実践”の4つに絞り紐解いていきました

 

あなたは本当に“家族の声”を聞けているか

医療者が家族側になった時なにを思うのか ~体験談から~

たにぐち整形外科クリニック 中木 哲也 先生 

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医療者の皆さんは臨床現場において患者・家族と接する時に何に気を付け、どのような思いで対応していますか。入院治療中や退院後における患者・家族の思いは計り知れず、医療者は患者・家族に寄り添いながら少しでもその思いを表出してもらい不安を軽減するよう努めなければなりません。このセッションでは医療者が患者家族の立場に立った際に、医療者目線では分からなかった患者・家族の観点を踏まえ、医療者がとるべき行動を一緒に考えていきました。

 

 今回の学術大会・全国研修会に参加された受講生の方々からは、「明日から自信をもって離床に取り組める」、「もっと離床について学びたい」といったポジティブな意見が数多くよせられました。

次回、第9回全国研修会・学術大会の開催は2019年6月15日(土)です。