
質問
腱板損傷の患者さんで、挙上時に肩前外側が痛く、三角筋ばかりが頑張って肩がすくむように動きます。「腱板が切れているなら、筋トレしても意味がないのでは?」と言われることもあります。Force Coupleの観点から、何を評価し、どんな順番でアプローチすれば良いですか?
回答
回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣
結論から言うと、腱板損傷でも、上腕骨頭を求心位に保つ仕組みであるForce Coupleを再建する余地は十分あります。
ポイントは、
①痛みを増悪させない条件づくり
②骨頭の求心位を作る運動学習
③挙上・ADLへ統合、の順で進めることです。
Force Coupleとは、複数の筋が「引っ張る方向の違い」を利用して、関節の中心に上腕骨頭を安定させながら動きを生み出す、力の釣り合いのことです。肩関節では、三角筋が上腕骨を挙上させる一方で、腱板が骨頭を関節窩へ引きつけ、上方へ逃げないように制動する、筋活動の協同が代表です。腱板損傷でこの釣り合いが崩れると、三角筋優位の活動により、骨頭上方化からインピンジメント様の疼痛が出現、さらに腱板が働きにくい、という悪循環に入りやすくなります。
第一段階では、痛みの出る動きを避けつつ、肩甲骨の後傾・上方回旋が出る肢位ですくみ肩を減らします。壁・テーブルでの軽い荷重、肩甲骨セッティング、前鋸筋・下部僧帽筋の促通で土台を作り、夜間痛や炎症が強い時期は負荷よりも刺激量と再現性を優先します。
第二段階で、棘下筋・小円筋などの残存腱板に“低負荷で確実に入る”課題を入れます。0〜30°外転位での外旋・内旋、等尺性、閉鎖性連鎖での軽い回旋を用い、「骨頭が前上方に逃げない感覚」を視覚・触覚フィードバックで学習させます。
最終的に、求心位を保ったまま、挙上時に痛みが出ない範囲でのスキャプション、リーチ、整容動作へ段階づけ、「三角筋で引き上げる」から「腱板+肩甲帯で支えて挙げる」へ再教育します。
Force Coupleを意識して、根拠に基づいたアプローチができるようにしましょう。
Tweet


