質問
認知症患者さんで、暴れるなどのBPSDは、ケアで改善できますか?
回答
回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣
BPSDの要因をアセスメントすれば、ケアによって改善できると考えます。BPSDとは、(Behavioral and psychological symptoms of dementia)の略で、日本語訳では「認知症の行動・心理症状」となります。このBPSDは、本人やスタッフ・介護者にとって「困る症状」ともいわれています。
BPSDは、認知症の中核症状(記憶障害や注意障害など)のほかに、脳病変やホルモン、その場の環境など、様々な要因が加わり起こります。大切なことは、中核症状とBPSDは重なる部分があるものの、治療部分で考え方が異なることです。中核症状は、徐々に進行しますが、BPSDの多くは適切な薬剤と非薬物療法で軽減・消失する可能性があります。そのため、一つずつ要因をアセスメントし、対応していくことが大切です。
過去の事例で、ベッド上で暴れている認知症患者さんがいました。この患者さんの暴れている原因は、言葉が出しづらい失語様症状という中核症状の中に、尿閉という原因が隠れたことでした。この患者さんはレビー小体型認知症で、レビー小体型認知症は排尿障害を合併しやすい認知症です。排尿障害をうまく訴えられないことが、暴れる原因になっていると推測し、トイレ誘導を促し、排尿障害に対する薬剤治療を行うなど対策を強化しました。対策をしばらく続けてみると、暴れる機会の減少がみられました。
認知症患者さんのケアの方法として、以下の4つの対応を意識してみてください。
- 疾患(原因となっている病態・症状の把握)
- 薬剤(作用・副作用について把握)
- 環境(不快なものを取り除く:騒音・光・温度など)
- コミュニケーション(その人に対する接し方:存在を認め、丁寧に対応する)
これらを意識することで、BPSDの症状が軽減される患者さんが増えると思います。皆さんのケア・離床に役立ててみてください。
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