質問
脳出血後の患者さんで、気分が乗らず、促さないと離床が進まない方がいて困っています。どうすればいいですか?
回答
回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣
脳卒中後に気分が乗らない要因として、「脳卒中後疲労」や「脳卒中後うつ」があります。対策には、睡眠や活動など日内リズムを整えることが大切です。
脳卒中後疲労(PSF)は、「慢性的かつ持続的な過度のエネルギー不足」を特徴とし、うつ症状はないのにも関わらず、「疲れやすい、倦怠感、努力するのがしんどい」などを患者さん自身が感じる状態です。脳卒中患者の約7割に見られるという報告もあり、無視できない後遺症です(文献1)。脳卒中後疲労(PSF)は、患者さんはなぜ疲労するかわからず、不安や罪悪感、自尊心の低下を引き起こして離床のモチベーション低下につながります。
また、脳卒中後うつも離床のモチベーション低下につながる後遺症です。脳卒中後うつも診断がついていないケースもあるので、疑われるケースは適切な支援・治療につながるように主治医に報告し、普段の関わりの中での理解・支援が必要です。
離床のモチベーション低下に対する対策としては、「気分が乗らない」などの否定的な感情は自然な反応として受け止め、患者さんのペースを大事にしましょう。「身体が動かないから何もできない」といった言動は「動きにくいけれども○○はできるし、○○を楽しめる」など、肯定的な認知へ誘導する姿勢が大切です(文献1)。
さらに、生活リズムを整え、疲れが出にくいようにするとともに、疲労の程度や出方を記録して患者さん自身が疲労のパターンを把握しやすいようにします。離床後に休息の時間を設けるなど、活動と休息のバランスを保ち、活動や離床に参加できる環境を構築していきましょう。
文献1
Amélie Ponchel et al Factors Associated with Poststroke Fatigue: A Systematic Review Stroke Res Treat. 2015:347920