日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.600 【結帯動作制限の改善は内旋?】肩関節に関するQ&A

質問

肩関節疾患で結帯動作制限がある患者さんに対して、肩関節内旋動作にアプローチするのが良いと習いました。でも、なかなかしても良くなりません。どうすればいいですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

結帯動作は肩関節内旋だけではなく、多関節の複合動作にアプローチが必要と考えます。

結帯動作とは、着物の帯を背中で結ぶ動作を示しますが、「エプロンの紐を後ろで結ぶ」「ブラジャーのホックを背中でとめる」「ワンピースの背中のファスナーをしめる」「背中側のシャツの裾をズボンに入れ込む」「下着を引き上げる」など、手を背中に回して行う動作が結帯動作にあたります。手を後ろに回す際には、肩関節の内旋に加えて、肩関節伸展・内転(開始肢位は外転)、肘関節屈曲、肩甲骨内転位をキープした状態で前傾、下方回旋の動きが必要になります。

結帯動作時の肩関節周囲筋の筋活動やアプローチ方法に着目した研究では、棘下筋・烏口腕筋の柔軟性・伸張性の促進により、肩甲上腕関節の可動域が改善した1)ことが報告されています。

また、菱形筋・前鋸筋の柔軟性および、肩甲骨の安定性の獲得により、肩甲胸郭関節の可動域改善も重要です。筋レベルや肩関節可動域レベルでの評価・アプローチも必要ですが、動作における関節可動域制限を診る際は、その「動作」のどこでどんな制限が生じているのかに着目することが大切です。元々の姿勢のとり方や動作パターンをチェックし、体幹・肩甲帯を含めた全身の関係性から評価・アプローチを行いましょう。

文献1
稲葉長彦 結帯動作制限を生じた肩関節周囲炎一症例に対する治療戦略 理学療法の科学と研究 Vol.14(1).2023.