日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.573 【脂肪を摂ると良いことがある?】呼吸不全と栄養に関するQ&A

質問

呼吸状態が悪い患者さんの栄養療法で注意すべきことはありますか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

呼吸状態の悪い患者さんの栄養では、栄養の代謝過程で生じる二酸化炭素に注意が必要です。重症呼吸不全であるARDSの患者さんは、25kcal/kgのカロリー投与や、1.2~2g/kgのタンパク質投与を目指すなど、一般的な方針は他の重症患者さんと変わりません。

ただARDSの重症症例では、高い頻度で高二酸化炭素血症(高CO2血症)となることがあります。その場合、糖質を中心とした栄養組成では、二酸化炭素の産生量が多くなり、この高CO2血症が増悪する可能性が指摘されています。

そこで、糖質ではなく、脂質を中心とした栄養組成にすることでCO2産生を抑えつつ、栄養投与量の維持をするという方針をとることがあります。実際、COPD患者さんの急性増悪の際に、高脂肪栄養とすることで、人工呼吸器期間を短縮したという報告もあります(文献)。

呼吸状態の悪い患者さんでも、栄養投与は重要な治療の1つですが、栄養に伴う二酸化炭素の貯留には注意して、離床時のアセスメントを行いましょう。

文献
NmalSadyetal.Highfat,lowcarbohydrate,enteralfeedinglowers PaCO2 andreducestheperiodofventilationinartificially ventilated patients. Intensive Care Med.1989;15(5):290-5