日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.530 【腸の血流を改善する2つのアプローチ】寝たきりと血便に関するQ&A

質問

高齢者で臥床傾向の患者さんは、血便が出やすくなるって本当ですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

本当です。寝たきりによる血便の要因は、直腸の虚血です。直腸が虚血になる要因は、寝たきりによって引き起こされる「脱水」と「便秘」です。高齢者はベースが脱水である上に、臥床状態では上半身に血流がシフトすることで、利尿ホルモンの分泌が促進して慢性的に脱水状態となり、腸の血流が低下します。

さらに、臥床状態は、腸蠕動運動を抑制して便秘を引き起こします。脆弱化した血管に、便秘による局所圧迫(血流障害)や、脱水による血流低下が起こると、直腸粘膜は次第に虚血の状態となっていきます。虚血状態では、大腸の粘膜が損傷を受け、粘膜が腸管壁からはがれ落ち、鮮血便や鮮血が混じった出血を伴う下痢症状が現れます。

対策は座位以上の離床の機会を作ることと、お腹に触れて腸の血流を改善するのがお勧めです。座位を保持することで、下半身に血流はシフトするので大腸の血流は維持されます。

また、背臥位で深呼吸を合わせて腹部全体を優しく触れます。そのときに、腹部を左右で比べたときに、張ってる方があれば、指先(指腹)で爪の色が変わらない程度の圧で軽く圧迫してみましょう。このアプローチで、腸の位置が整い、腸の血流が改善する効果が期待できます。臥床傾向で血便の出る患者さんがいたら、試してみてください。