日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.498 【腰を守るだけではない】動作介助に関するQ&A

質問

ノーリフティングは持ち上げない介助ということですが、持ち上げないで介助することはできるのですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

結論から言うと、持ち上げないで介助することは、物品を活用することで可能で、介助者・患者さん双方にメリットがあります。ノーリフティングはリフトなどを用いて、介助者が患者さんの身体を持ち上げることなく、動作介助を行うことです。

移乗動作では、リフト吊り上げることで移動するものや、機器に寄り掛かるようにして立ち上がりをサポートし、トイレ移動を楽にするものがあります。また、ベッドでの上方・側方移動やストレッチャーへの移動の際にも、持ち上げて介助することが多いと思います。この時に、摩擦を減らすシートやボードタイプの機器を使用することで、持ち上げることなく、滑らせるように介助をすることができます。ノーリフティングでの介助は、介助者の腰を守ることはもちろん、患者さんも介助されるのが楽なので、痛みや過剰な緊張を避けることにつながり、離床機会が増えることが期待できます。

「そうは言ってもなかなか機器の導入なんてできないよ!」と思う方もいると思います。確かにそうですが、国も平成25年に腰痛予防指針を改訂して、「人力での抱え上げは、原則行わせない。リフトなど福祉機器の活用を促す」と明示しています。つまり、管理体制として抱え上げと行わせないというのがポイントです。実際に、高知県は介護職員の休職・離職対策として、県をあげて“ノーリフティング宣言”を出して、職員の腰痛減少や寝たきり減少などの効果を挙げています。