日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.408 【失行に対するアプローチ 2つのポイント】ただ反復するだけでは効果薄

質問

観念失行ある患者さんで、歯ブラシを使って髪をとかそうとする方がいます。何度櫛を使うよう促しても上手くいかず、本人もストレスを感じているようです。どのようなアプローチをすればいいですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

実際の道具(今回の場合は櫛)を使って動作を反復する、手順を記載した絵を見てもらって代償する、2つのアプローチがお勧めです。

観念失行とは、日常的に使用する物品がうまく使えなくなる高次脳機能障害で、左半球の頭頂葉が責任病巣といわれています。今回のケースでは、使用物品を間違える部分にエラーをきたしているので、まずは歯ブラシを利用した時にフィードバック・修正し、櫛を使うよう誘導しましょう。そして、実際にスタッフの動きを模倣してもらい、自分でできるようになったら徐々に介助量を減らしていきます。

また、動作手順を書いた紙を見せて、実際に遂行してもらうアプローチも有効です。こちらは、フィードバックによる修正が困難な場合に試してみましょう。

一方で、病棟では本人が使用するスペースに置く物品を限定し、患者さんが混乱しないよう環境調整を行います。櫛と歯ブラシが同じ場所にあると、患者さんも混乱してしまうので、道具を混在させないよう注意が必要です。スタッフによって関わり方や対応方法が異なると、患者さんとの信頼関係が崩れる危険性があります。多職種間で情報共有しつつ、支援方法を統一していきましょう。