日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.106 体位変換と脳血流の関係

質問

脳血流は背臥位や坐位、立位で増減すると思うのですが、体位変換に伴ってクッシング現象が生じる人の脳血流量と意識レベルの関係についてメカニズムを教えてください。

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

講義の中で自動調節能の話をしました。自動調節能とはある一定の血圧の間では脳血流は増減しないというものでした。つまり、血圧が上がっても、下がっても脳血流は一定に維持されるようにコントロールされているのが自動調節能です。

よって背臥位でも座位でも脳血流の大きな増減はないと考えられます。健康な人でも背臥位から急に立ち上がるとフラッとすることがあると思いますが、長続きはしないはずです。それは、脳の血流が不足しないように「脳」そのものに血流が維持される仕組みになっているからです。

ただし、脳血管に障害を呈した場合は違います。それが自動調節能の破たんです。自動調節能が破たんすると、血圧に依存し脳血流も変動します。血圧が上がれば脳血流も上がり、下がれば脳血流も下がります。

クッシング現象とは頭蓋内圧が亢進している場合に脳血流を維持しようと血圧が上昇する現象でした。側臥位での血圧変動に対する報告はありませんが、立位や坐位では血圧が変動することはよく知られています。

また、背臥位は脳血流量が上昇することが知られています。頭蓋内という限られた空間の中で脳を保護するためには脳血流を維持しかつ血液の停滞を防ぐ必要があります。この事例では体位によって頭蓋内の血流が増え、停滞したことによって頭蓋内圧の変化を来したと考えられます。また頭蓋内圧が高くなることで、脳血流も低下し意識状態も変動したのだと考えます。

臨床では一つのケアやアプローチを実践した際の患者さんの変化を感じ取ることが最も重要です。