小豆沢病院訪問レポート

報告者:飯田 祥(日本離床研究会 学術研究部)

 2018年7月に東京都板橋区にある医療法人財団健康文化会 小豆沢病院を当会の曷川理事長・飯田(学術研究部)が訪問し、新たな嚥下アプローチである完全側臥位法の実践の現場を視察してきました。

 小豆沢病院は回復期リハビリテーション病棟,地域包括ケア病棟を有する地域の中核病院で,健和会病院の福村直毅医師の指導のもと,嚥下障害に対する完全側臥位法を実践している施設です。

嚥下障害へのアプローチ-完全側臥位法-
 嚥下障害に対するアプローチである完全側臥位法は、2012年に福村医師が報告した方法です。完全側臥位法は、「重力の作用で中~下咽頭の側壁に食塊が貯留しやすくなるように体幹側面を下にした姿勢で経口摂取をする方法」1)であり、今まで嚥下訓練の一般的な姿勢である30度ヘッドアップや座位よりも安全な方法と提唱しています。福村医師の研究2)では、嚥下障害の患者さんに対して、従来の方法に比べ、完全側臥位法の方が経口摂取可能となった割合が有意に多かったと報告しています。

azusawa_report01.jpgazusawa_report02.jpg

写真1 完全側臥位法(自己摂取)    写真2 食器用傾斜トレー

完全側臥位法の実際
 完全側臥位法は、福村医師の診察により、自己摂取・介助、食形態、回数、一口量などの細かい指示が出されます(図1)。写真1の症例は、左側臥位で自己摂取を3食実施しています。側臥位では、視線と器の高さの関係から、食事が見えにくいため、傾斜のついたトレー(写真2)に器を固定し、自己摂取しやすいように工夫していました。スプーンを通常通り水平に使用すると、口に対してスプーンは縦になるため食べづらい形となります。一度にすくう量を少なくし、スプーンを傾けて口に運ぶなど工夫していました。30-40分の摂取時間でしたが、むせることなく食事摂取をしていました。

azusawa_report06.jpg
          図1 食事実施表

嚥下評価の実際(嚥下内視鏡検査)
 完全側臥位法は、全ての嚥下障害に万能な方法ではなく、適切な嚥下評価に基づいて行われます。嚥下内視鏡検査(VE検査)により、患者さんにも映像を見てもらいながら、わかりやすく嚥下の状態をフィードバックしていました。写真3の症例は、脳梗塞・廃用による嚥下障害で、退院後も在宅で完全側臥位法にて食事摂取を継続しており、座位での水分摂取を希望して外来受診しました。写真4の症例は、COPD,肺炎により気管切開を実施された方で、日中を中心に離床しているにも関わらず、痰が多いというのが問題です。VE検査の結果、喉頭筋周囲に慢性的に分泌物が多く、起きている姿勢(離床)がかえって分泌物の垂れ込みを増やしている可能性を指摘していました。今後の対策として、離床時は前傾座位をとること、夜間は側臥位を徹底することを指導しました。

azusawa_report03.jpgazusawa_report04.jpg

   写真3 外来でのVE検査      写真4 ベッドサイドでのVE検査

 安全かつ効果的アプローチを提供するためには、正確な評価・診断が大切であると学ぶことができました。その実践を見せてくださった福村先生、ご協力くださった患者さんと小豆沢病院の皆さん、ありがとうございました。

azusawa_report05.jpg

 右から齋藤看護師、飯島ST、曷川理事長、福村医師、砂田医師、飯田

※全ての写真・資料は小豆沢病院および福村直毅医師に許可を得て使用しています。

 引用文献

1.福村直毅;教育講演Ⅱ嚥下障害に対する 嚥下障害に対する攻めのリハビリテーション―完全側臥位法.一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会,回復期リハビリテーション.pp9-13.201

2.福村直毅ら. 重度嚥下障害患者に対する完全側臥位法による嚥下リハビリテーション 完全側臥位法の導入が回復期病棟退院時の嚥下機能とADLに及ぼす効果:総合リハビリテーション40巻10号 pp1335-1343,2012