日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【吸気筋トレーニングは効果がない!?】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。

今回は「吸気筋トレーニングは効果がない!?」という内容を紹介します。

皆さん、人工呼吸管理されている患者さんの呼吸リハってどのようにやっていますか?離床でしょうか、はたまた上肢のトレーニングでしょうか、はたまたポジショニングや排痰トレーニングでしょうか。意外と呼吸筋のトレーニングを積極的にしている施設は少ないかもしれません。人工呼吸管理されている患者さんの呼吸筋トレーニングを、どのようにしていくかは大きな課題ですよね。

今回は、そんな人工呼吸管理されている患者さんの吸気筋トレーニングに関する報告です。フランスのThomasさんが無作為化比較試験を実施しました。人工呼吸器の離脱が困難な、92人の人工呼吸管理されている患者さんを無作為に分けて、1日2回、1週間に7日間、抜管まで吸気筋トレーニングを実施しました。患者さんは吸気筋の抵抗を低、中、強の3つの強度に分けて3群に分けられました。吸気筋の抵抗は、フィリップスのIMTデバイスを使用したようです。
https://www.philips.ie/healthcare/product/HCHS730010/threshold-imt-breathing-trainer

結果は、最大吸気圧、ピーク圧、人工呼吸期間、ICU入室期間、再挿管率の全てにおいて、強度の異なる3群のそれぞれで違いはなかったようです。自然と回復する徐脈は認めたようですが、特に強度とは関係していないようでした。この研究は強度の異なる吸気筋トレーニングを比較したもので、吸気筋トレーニングの是非を議論したものではありません。なので、吸気筋トレーニングに効果がないわけではなく、強度で違いがなかったということです。

今回の研究からいえることは、吸気筋トレーニングの抵抗の強度は強ければ強いほど良いという分けではない。吸気筋トレーニングによる徐脈や心臓への負荷などには注意が必要とのことでした。

呼吸回路に挟んで吸気筋トレーニングができるデバイスもあります。人工呼吸器を離脱できない患者さんを、ただただ転院させるのではなくて、こういった機器も使用して、人工呼吸器を離脱できるようにリハビリしていきたいですね。吸気筋トレーニングは効果があるはずです!

Impacts of three inspiratory muscle training programs on inspiratory muscles strength and endurance among intubated and mechanically ventilated patients with difficult weaning: a multicentre randomised controlled trial
https://jintensivecare.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40560-024-00741-3