日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.730 【離床をどう進める?】視床・脳幹障害に関するQ&A

質問

脳卒中により視床や脳幹に障害があるケースでは、意識レベルに日内変動があり、血圧や心拍数も不安定、さらに離床の反応性が乏しい患者さんがいます。このようなケースでは、どこからアプローチを始めていくべきですか?

回答

結論から言うと、まずは意識と自律神経の安定を最優先に整え、その状態を土台の上に離床を組み込む視点が重要です。

視床は覚醒レベルや感覚入力の統合に関与し、脳幹は意識の維持、自律神経調整、姿勢・運動出力の基盤を担っています。この領域の損傷では、「動かそうとしても反応が鈍い」「急に覚醒が落ちる」といった状態が、筋力低下だけでなく中枢の調整不全として現れます。この段階で、運動反応だけを見て「筋力が弱い」「意欲が低い」と判断し、負荷をかけた練習を行うと、血圧変動や意識低下を招き、結果的に離床が不安定になります。

そのため第一段階では、姿勢変換時の血圧・心拍変動、呼吸リズム、覚醒の持続性を観察し、自律神経が破綻しにくい条件を探すことを優先します。具体的には、急激な起き上がりを避けた段階的な角度調整や、頭部・体幹を安定させた支持基底面の確保、刺激量を絞った短時間介入を行います。

こうした関わりは一見「運動とは関係ない」ように見えますが、実際には、視床—脳幹ネットワークの過剰な負荷を避け、運動出力が出やすい中枢環境を整える作業でもあります。その後、覚醒が安定し、姿勢保持や視線保持が可能になってきた段階で、抗重力位での軽い四肢運動や、体幹・近位筋を中心としたシンプルな運動課題を導入します。

つまり、「動かす前に、意識と自律を整える」「動けない理由を、運動器だけで判断しない」という視点をもつことで、視床・脳幹病変の離床や運動介入は、より安全で効果的になります。是非、意識・自律・運動が絡み合う脳卒中症例を考える際の、アプローチ整理の参考にしてみてください。

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