日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.613 【脂肪が原因で関節の痛みは生じるか】ROM制限に関するQ&A

質問

脂肪の痛みが原因で、ROM制限が生じることがあるって本当ですか?

回答

本当です。脂肪体は関節の隙間を埋めて、関節の噛み合わせを調整してくれている脂肪組織で、この脂肪組織に過剰なストレスがかかると炎症を起こして痛みの原因となります。

例えば、膝関節の痛みは、膝蓋下脂肪体炎による痛みの場合があります。膝蓋の下に位置する膝蓋下脂肪体は膝の屈伸の動きに合わせて形を変化させながら動き、その働きは、膝蓋骨を滑らかに動かす、膝のクッションとなる、膝の内圧を調整するなどです。

膝蓋下脂肪体には痛みのセンサーである神経線維が多く存在していて、膝関節を動かした時に、膝蓋下脂肪体が大腿骨顆部に挟まれると圧痛が起こります。膝蓋下脂肪体炎のサインは、膝関節伸展時のみにみられる膝蓋下の圧痛です。膝蓋下脂肪体炎に対しては局所麻酔薬の注入のほか、脂肪体のモビライゼーションによる柔軟性改善、膝蓋骨の可動性改善、大腿四頭筋の柔軟性改善により、疼痛の緩和が望めます。

また、踵の痛みにも脂肪が関係していることがあります。踵部脂肪体が加齢の影響で萎縮し、肥満や繰り返す衝撃で炎症を起こすと踵部痛が起こることがあります。踵部脂肪体による踵部痛は体外衝撃波やインソールによる衝撃緩和、クッション性のある路面から硬い路面へと移行しながら、漸増的に踵へ荷重を促すアプローチなどが有効とされています。

レントゲンでは異常がないけれど、痛みでROM制限がある場合には、脂肪にも注目してみてくださいね。

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