質問
痙縮に対する薬物療法後に行う関節可動域エクササイズは、具体的にどのようなアプローチが有用なのでしょうか?
回答
中枢神経障害で起こる痙縮に対して、ボツリヌス療法など薬物療法は有用ですが、注射しただけでは十分回復せず、その後のアプローチが重要です。
具体的には、ボツリヌス療法により痙縮が軽減された筋の十分なストレッチを行い、制限されていた関節可動域の拡大を図ります。筋の短縮が強い場合には温熱療法や装具療法などを併用し、筋の伸長を促します。痙縮によって活動が抑制されていた拮抗筋の活動も促通し、随意運動も促していきます。さらに、獲得したいADL動作のために必要な運動性や安定性の獲得をめざし、機能練習や筋力増強、バランス練習を実施します。
その上で、実際の生活場面を想定した歩行練習、ADL練習を進めていきます。この時のポイントが「体幹」にあります。体幹の不安定さを四肢末梢の緊張を高めてバランスを取っていた場合、痙縮が軽減されることによってバランスを崩しやすくなったり、代償的な姿勢が強まったりする場合があります。痙縮が改善された関節の動きの確保も必要ですが、痙縮が改善されたときのバランスや動作などの評価を行い、「しているADL」につなげるアプローチを行うことが重要です。
また、自主訓練も指導し、関節可動域の確保と痙縮が改善された状態での、関節の動きやバランスへの適応を促していきましょう。ボツリヌス療法の効果は時間が経つと薄れていきますので、痙縮が戻ってADL動作に影響することも踏まえて進めることが大切です。
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