海外交流:ジョンズ=ホプキンス病院訪問

10月上旬、当会の曷川理事長がアメリカのジョンズ=ホプキンス大学を訪れ、D.Needham教授とそのチームから、約2週間にわたり臨床・研究に関する教育を受けてきました。

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ジョンズ=ホプキンス大学病院は1876年に創立され、全米病院ランキングでトップをいつも独占している病院です。一般術後ICU、移植ICU、脳神経ICU、心臓血管ICU、小児ICUなど、様々なICUがありますが、今回は呼吸器に疾患をかかえる患者さんを中心に診療しているMedical ICU(MICU)を中心に指導を受けてきました。気管内挿管患者の離床に関する科学的根拠を発信しているICUだけに、多くの患者が挿管中から離床されていました。

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※歩行中の患者さんの写真は、ご本人・家族の承諾を受け撮影された写真を、病院の許諾を得て使用しています。

中でも印象的であったのが、上記ベッドの奥に見える椅子です。昔からアメリカでは「Chair Position」といって、ベッドから椅子に移り、座位を取ることが推奨されてきました。この椅子に移乗して過ごすことにより、日中はベッド上ではなく、離床する時間が確保できるのです。現代においても人工呼吸器装着患者さんの離床に活かされていました。また循環に問題がある患者さんを除き、すべての症例が24時間Head Upされていました。背臥位で臥床することは、人工呼吸器関連肺炎や誤嚥性肺炎を起こす原因になることが周知されているため、その予防策として「背臥位ゼロ」が施行されていました。

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研究面では、データ収集のための体制が重要であると痛感しました。毎日、診療記録に、患者活動度や離床の状況を丁寧に付ける習慣はもちろん、そのデータに欠損がないか、矛盾がないかをチェックする専門を1人置くこと、さらには、そのデータの推移を統計処理した上でまとめ、1か月ごとにその経過を追い、現在自分たちが行っているアプローチは、患者アウトカムを改善させているのか、常に考えている姿が印象的でした。研究のための研究ではなく、臨床で患者さんに還元されるシステムに感銘を受けました。

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またチームコラボレーションに関する工夫も随所に見られました。ジョンズ=ホプキンスではCUSP(The Comprehensive Unit-based Safety Program)というコンセプトがあり、病棟ごとに課題を決め、システマティックに取り組んでいました。患者の転倒防止、スタッフの腰痛防止対策としてのNoリフトサイン表示など、CUSPをもとにリーダーが様々な試みを行っています。離床の領域でも、患者さんの活動度をスコア化し、リハビリテーションスタッフだけでなく、医師・看護師もスコアリングの教育を受け、患者の自立に向けた取り組みを共有していました。

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この期間を通して、MICUを統括するD.Needham教授と、日本とアメリカにおけるアプローチの違いや、離床の障壁(バリアー)を打ち破るために必要な対策について、様々な意見交換が行われました。

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理想のアプローチを実現するためには、臨床・教育・研究それぞれにおいて、しっかりシステムを構築し、取り組むことが大切だということを学びました。そのすべてを実践しているジョンズ=ホプキンス大学病院の皆さん、ありがとうございました。

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右からAmy Toonstra(PT), Stephanie Hiser(PT), Dale Needham (MD), Earl Mantheiy(Clinical Program Coordinator),曷川元